『坊っちゃん』の時代 第4部 明治流星雨―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (第4部)

  • 双葉社 (1995年4月1日発売)
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感想 : 19
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彗星と共に明治の佳き日々が去る     

大逆事件は日本の法曹界、最大の汚点だと思うが、戦時中にあれやこれやと同様、一億総懺悔のおかげか、あまり知る機会がない。

明治が日本近代の青春時代というなら、若気の至りとして目を瞑りたくなるが、奇兵隊の中隊長のやるこたぁ、凄惨極まりない。信州で見つかった手製爆弾から、その存在を知らない者までも含め、24人もの社会主義者などに死刑を下した事件だ。その事件と中心人物、爆弾のでなく大逆罪の、幸徳秋水が主人公だ。

作者も言っているいるとおり、この作品は、「ユーモアという重要な要素が欠けた憾み」が残る。にも関わらず、読後、いくらか爽やかであるのは、主義者達が一部を除けば清廉であり、その清廉さゆえに危険視されるのだが、思想上の違いを越えた友誼が描かれているからではないだろうか。

思想上の違いがあれば、斬り合いになった幕末から半世紀、西南戦争を経て、曲がりなりにも議会を機能させ、議論が出来るようになったのなら、日本は成る程、成長したのかもしれない。その成長を歪めたのが、明治維新を推進してきたはずの山縣有朋というのは皮肉だ。しかし、むしろ政治家の我が儘や妄言を隠れ蓑に、趣旨を曲げて国家運用する術ばかり長けてきた官僚組織、そして、言論、報道の権力のみを理解し、果たすべき役割を無視し続けた報道機関の方が恐ろしい。大逆事件どころか一億総火の玉にも反省の欠片も無さそうだ。

幸徳秋水は、共産党宣言を翻訳しているのだが、「万国の労働者たち同盟せよ・・・」でなく、「万国の職工たち同盟せよ・・・」だと、随分印象が違い、意図が明快になる。いつの間にか公務員まで労働者風な顔しているが、秋水が官僚組織に在る者などに同盟を呼びかけているとは思えない。

坂の上の雲の時代が終わる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2010年4月12日
読了日 : 2010年3月30日
本棚登録日 : 2010年3月30日

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