ゲド戦記外伝 (物語コレクション)

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本棚登録 : 33
レビュー : 6
木谷りこ★さん はっぴゃくじ@Review Japan掲載書評   読み終わった 

<三部作>時代から考えると、随分遠くに来てしまった観のある『ゲド戦記』。かつてのシリーズ作に思い入れがある人ほど、手に取る前にためらいを覚えるのではないでしょうか?
 でも、もし5巻『アースシーの風』まで読んだなら、そのまま『外伝』に進んだほうがすっきりするかと思います★

『アースシーの風』はもはやゲドの戦記とは呼べず、ゲド自身は力をなくした老人でしたからね。世界は次世代にゆだねられたけど、その彼らにさえ、あっさり別れを告げる結末。風があまりに爽やかに吹き抜けすぎたか、読後に感じていた一抹の寂しさを、『外伝』は癒してくれます★(そういう意味では「トンボ」は必読)

 時間をかけてル=グウィンの中で発酵してきた、アースシー世界の断片が収められた作品集。DNA鑑定の話ではないけど、断片情報は全体像をも浮き上がらせるもの★ あらためて、自分はなぜアースシーの物語に魅了されてきたのか、再確認できる読書体験でした。

 今や商業化されてしまった安全なファンタジーシリーズとは、一線を画した世界観。魔法使いは呪文一つで何でも解決する便利屋でもなければ、人を驚かせて楽しむ手品師とも違っています。言葉の響き、意味の重さ、知の蓄えが、魔法になる……。派手派手しいところのない、じっくりこっくりな読み物です。

 わりと動きのある作品と言えば、大地の震動を止めるため、自ら支えとなる『地の骨』あたりですね。それすら、土や泥や家畜の匂い、生活感あふれる作品です。
 横暴な者が安易にこじ開けた世界の傷口をつくろう技とは、丹念な手作業に連なるものなのだ、というところに、アースシーを読み解く鍵があるのでしょう★ 読み終えたとき、自分が手軽で便利な世界に逃げて、生活の基盤をおろそかにしてきたような気がして、ふと考えごとにふけってしまいます……。

 アースシーの種族や言語、歴史等をまとめた巻末解説も嬉しい☆

レビュー投稿日
2018年1月24日
読了日
-
本棚登録日
2007年6月26日
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