ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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本棚登録 : 602
レビュー : 76
木谷りこ★さん はっぴゃくじ@Review Japan掲載書評   読み終わった 

<純粋な頭脳戦!>


 コントラクト・ブリッジを巧みに使って練り上げられた、クリスティー中期の良作です! もう一度書きます。良作なのです。

 あんまり人気がないらしいですね、この作品。チェスやブリッジに馴染みのない日本では、こういう趣向に需要がないのは当然か……としても、本国イギリスでも好かれていないと聞くと寂しいものが。『ひらいたトランプ』を楽しんでしまった木谷という人は、よほど特異な趣味の持ち主なのでしょうか。

 いえ、ブリッジのルールには全く覚えがないし、カードゲーム全般にどうも興味が持てないんですけどね。にもかかわらず、意外とスリルを味わえたのは……、そんなに期待していなかったからかもしれませんが。

 限られた空間での犯罪を好んで書いているクリスティーだけど、これ以上犯行条件を限定した例はほかにないんじゃないでしょうか?
 最初から、容疑者はゲームプレイヤーの4人に絞られています。全員がルールにのっとってゲームをしていて、不正な手段は一切なし。ミステリという、フェアかアンフェアかということをさかんに問われるジャンルで、芯からフェアに進められています。正直、これだけフェアなクリスティー作品は貴重でしょう★

「犯人候補」の顔ぶれもユニークです。お馴染みエルキュール・ポアロと、このシリーズに時々顔を出すバトル警視。オリヴァ夫人に、レイス大佐。なんと、これだけ! ポアロさんも容疑者に含まれます。
 灰色の脳細胞をフルにはたらかせて、真相に迫っていく名探偵。カードの得点表に残された動かしようのない証拠から、プレイヤーの心理状態を読み解くのです。純粋な頭脳戦、純粋な推理活動、というところに妙味を感じます。

 手の内を明かされないようふるまうプレイヤーたち。何を隠しているのか、どうやって隠そうとするか――。たかがゲームと侮るなかれ。こうした攻防戦を、私たちは日々の中でもおこなっていますよね?

レビュー投稿日
2019年2月24日
読了日
-
本棚登録日
2003年5月29日
1
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