世界悪女物語 (河出文庫 121B)

著者 :
  • 河出書房新社
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<時代を挑発した悪女たちの、悲哀>


 澁澤先生による世界史の授業。年表を毒々しく彩った悪の華たちの生涯が、想像していたよりは毒のない、端正な文体で分かりやすく解説されています。歴史と人物の学習にもってこい。ただ、あまりに危険に満ちた事例が多発★

●ルクレチア・ボルジア―中世イタリアで最強の妹
 妹キャラって、人気あるらしいですね? ルクレチアこそは、悪名高いボルジア家に生まれ落ち、兄チェーザレの野心を叶えるために政略結婚を繰り返した、世界史上最強の「妹」! チェーザレはヨーロッパをチェスボードに見立てて壮大な戦いをくりひろげ、ルクレチアは常に彼の重要な駒として進められたのでした。

●マリー・アントワネット―無邪気すぎたフランス王妃
 遊び好きで政治的な知識に乏しく、一国の財政がかたむくまで贅沢の限りを尽くした彼女を、ギロチン台が待っていました。素は朗らかで、育ちのいいお姫様だったのではないかなと思います。しかし、ときに並み外れた無邪気さは罪に値するのです。

●クレオパトラ―英知で輝いたエジプトの星
 近隣諸国の言語に通じ、巧みな話術と美貌で権力者を次々に落とした才女。彼女の美とは、知性の刃で研がれたものだったようです。聡明ゆえに美しく、美しさを武器化した。だからこそ、女の魅力で訴えかけることに失敗した時、即、破滅を悟ったのでしょう。

 他にも「美貌と権力によって悪虐のかぎりをつくした女性、あるいはまた、愛欲と罪悪によって身をほろぼした女性」続出★
 はっきり言いますが、私はしたたかで欲深い女たちに憧れがあります。悪女性こそ、女が道を切り拓くための最強手段だ!
 しかし、歴史を揺るがした悪女たちも、余裕で世界をもて遊んだわけではなさそう。己の命運をかけて大見得を切り、背水の陣で時代を挑発した誘惑者。成功すれば華やかに生きられるかわり、一歩間違えれば派手に転落……。そんな一抹の哀れさも感じられたのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: はっぴゃくじ@Review Japan掲載書評
感想投稿日 : 2019年2月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2004年10月21日

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