かもじの美術家 ――墓のうえの物語――

  • 青空文庫 (2009年8月9日発売)
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感想 : 1

 古典文学には珍しく、ジェットコースターのようなスピード感にあふれる作品で、しょっぱなから引きこまれました!

 発表当時の19世紀後半、ロシアはドストエフスキーよりトルストイより、レスコーフの時代だったらしい★ その時代に流行るものには、そうさせる理由がきちんと潜んでいる。その誘引力を感じたような気がします。即、面白い。読みながら理解しようとしなくても「アクセスが早い!」という感じでした。

 その、かつての流行作家ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフの短篇『かもじの美術家』は、「もう?」と思うくらいあっという間に、楽々と軽々と、けれどもめまぐるしく、事が運ばれていきます。

 化粧で人は化ける。魔法のテクニックで、醜い伯爵もジェントルマンに変身✶ テンポよく仕上げていくさまを、コメディ物のように楽しめます。案外、当時の風俗を映し出した大真面目な話なのかもしれない★
 そして、美容師=美術家扱い! メイクやヘアスタイリングがそこまで認められているカルチャーは、羨ましい気もしましたね。しかしながら、職業芸術家は自由がないからこそ、こういうドラマティックな不幸も起き得るのでしょう……。

 ざっくり言うと、舞台女優とメイクアップアーティストの悲恋物語。かもじ君は想いを寄せた女優と手に手をとりあって、獣伯爵のもとから一目散に、決死の逃走劇を図ります。
 ですけど、どこかおかしい★ 悲劇的な結末に向かっていくのに、明るさをかき消せないのです。

 もらい泣きの一つもしなければならないところでしょうか? でもね~、「凄惨な、胸の底までかきむしられるような」お供養シーンも、暗がりで水筒のふたを口でひねるとか、リアルすぎな寝息「ヒューヒュー」とか……、細かすぎる描写の名人芸に、不謹慎ながらも笑いそうになってしまいます。

 喜劇も悲劇も語り口次第ですね。苦労話は軽やかにと学びました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: はっぴゃくじ@Review Japan掲載書評
感想投稿日 : 2019年2月10日
読了日 : -
本棚登録日 : 2003年3月22日

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