ぼくはこんな本を読んできた: 立花式読書論、読書術、書斎論

著者 :
  • 文藝春秋 (1995年12月1日発売)
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感想 : 47
4

著者の読書総論(読書に関しての四方山話)をまとめた本。

目次
<blockquote>1 知的好奇心のすすめ
2 私の読書論
3 私の書斎・仕事場論
4 ぼくはこんな本を読んできた
5 私の読書日記
</blockquote>
正直、読んでいてすごく疲れた。5章の「私の読書日記」なんて、急に3段構えになるものだから、1ページあたりの滞在時間が延びる延びる……。
もうそのあたりで読むのを止めてもよかったかもしれん。

さて、この本は著者ならではの読書に対するアプローチ、書斎論に書評をセットでつけたお得感の溢れる本です。ただし、この初版は1995年。今の本とは違った雰囲気の文章だった。

まずは独学について吠える。
<blockquote>そして、本はいちどきに購入してしまったほうがよい。独学で一番難しいのは、志を持続させることだが、そのためには、<u>前もって相当のお金を使ってしまったほうがよい</u>。たいていの人はケチだから、<b>先にお金をかけてしまうと、元手をかけた分くらいは取り返そうと勉強するもの</b>だ。
</blockquote>
経験からとはいえ、恐れ入る。先にお金をかけてしまうと元を取ろうとしてしまうのは認知心理学の認知的不協和からきている。だからこそ、これは誰にでも確実に有用だ。お金に困らない人は別として。

<blockquote>家に帰ったら、買ってきた本は書棚に入れないで、<u>机の上に積み重ねる</u>。書棚に入れてしまうと、なんとなしそれですんでしまったような気になるが、<b>机の上に置いておけば読まねばならぬ気がしてくる</b>。
あとはただひたすら読む。まず軽い概説書を読みとばす。教科書的入門書を読む。一冊読むとだいたいの輪郭がつかめるから、二冊目からは楽になる。
<b>精読する必要はない。ノートもとらないほうがよい</b>。<u>はじめからそんなに張り切りすぎると、必ず途中で挫折する。</u>ノートを取りながら精読したりすると、二時間で読める本に二日もかけてしまうことになる。一冊の入門書を精読するより、五冊の入門書をとばし読みしたほうがよい。<b>ノートをとらなくても、ほんとに重要なことはどの本でもくり返されているから自然と頭に入る</b>。
</blockquote>
やってることは多読なのですが、「ノートをとらなくてもいい」なんてかなり極端です。
著者はかなりのスピードで多くの本を読み飛ばして多読してますねー……。たしかに重要なことはくり返されるのですが、微妙な記述は取らないのでしょうか?
読後のメモに関しては、賛否両論なので、ここは個人の主義に任せる事にします。
ちなみに自分はこのようにメモ取る派です。

一方、独学のデメリットも述べています。
<blockquote>以上のような独学の過程で、なによりも注意すべきは、独学においては、<u>質疑応答というプロセスがないために、</u><b>ひとりよがりの解釈をしたまま、まちがったことを覚えこんでしまう</b>危険性である
</blockquote>
自己解決の怖さは、仕事でもありえます。著者も述べるように、その対策には多読する事で多くの人が支持している解釈を取る事と、専門家に訊ねることで勘違いを払拭するしか方法はないでしょう。
まぁ、それでもかなり前線の、微妙な解釈のありうる領域では難しいですが……
あ、今ならwikipediaでほぼクリアですね。「微妙な解釈のありうる領域」が必要になるのはあまり無いですし。

次に書斎論。この人はほんとオタクなんじゃないかと思う。
書斎用の机を求める記述から。
<blockquote>最終的に私が選んだのは、横浜元町家具で作っている一メートル×二メートルの特大のダイニング・テーブルだった。(中略)きわめてシンプルな作りのものだが、大人二人で持ち上げるのがやっとという重量級で、どんなにゆすってもビクともしない。
見て歩いた中で最高に気に入ったのだが、値段もとびきりである。約四十五万円もするのだ。いくら何でも机に投じる資金としては高すぎるような気がした。
(中略)
<b>これより安いけれどグレイドが落ちるものを買えば、きっと後から後悔するにちがいない</b>と思った。そして、机としては高いようでも、自動車にくらべればはるかに安いということで自分を納得させた。
(中略)
この判断は正しかった。今でも私はこのテーブルが日本で入手できる最高の机だと思っている。そして、<b>いい机という条件が、もの書き家業にとってこんなにも大切なもの</b>かということを日々に痛感させられている。
</blockquote>
結構長い引用だが、普通日常的に使う家具に大金を投じる例はあまりないだろう。
そこに敢えてお金をがっつり入れるあたり、「<i>やるな〜</i>」と思った。自分も例外なく同じように買っただろうし。
つーか、家で今も使ってる机は、新人の時に買ったのだが、近くの大手家具屋で十数万もした。社会人になってお金もできて、今まで使いづらかった環境を一変させようとあれこれ変えていった途中の事だ。
それ以来、今の家も完璧フルチューン、お金を結構かけて変えていった為、ネタついでに人に見せると、これはオフィスかと言われるLvになってしまったw
キーボードもREALFORCEかFILCOのキーボードだし、手帳も値のはるモレスキンをはじめ、いろいろ買っては試してみた。まぁ、ライフハック全盛の頃だったので、それが楽しかったというのもあるけれど。
しかし、それだけいいものを使うと、ケチってグレードの下がる品よりは<b>感じるものとかが全然違う</b>。
そこはお金かけただけの価値なんだけれど、制約が無い限りはグレードの低い品は使えなくなったなぁ……。


えー……ちょっと間が空きましたが、さらに著者なりの読書術を。
<blockquote>本というのは、<u>はじめからオワリまで読むべき本</u>と、<u>必要なところだけ拾いだして読めばいい本</u>とある。仕事の資料というのは、完全に後者だから、要はいかに効率的に、自分に必要な部分を見つけるかです。目次、索引を利用するのはもちろん、<u>これくらいの(一秒に一回くらいのペースでページをめくりながら)スピードでめくっていくだけで、不思議に必要なところが目にとまるんですよ</u>。人間の脳の働きにそういう能力があるっていうことは、脳のことを勉強していく中でわかってきた。つまり<b>人間の脳は、相当部分が意識化されないでもちゃんと働いている</b>んです。
(中略)
もちろん、<b>必要な部分に目がとまったら、そこは意識を集中してちゃんと読む</b>んですよ。それと僕は、<b>読む時に徹底的に本を汚す</b>んです。<u>ページを折るとか鉛筆で書き込みをするとか</u>。付箋を付ける時も、色を変えたりとか――。
</blockquote>
かなりいろんな読書法の混ぜ合わせみたいな状態だが、こうも実例で述べられてしまうと、有用なのかもしれないなぁ……という気がしてくる。
1ページ1秒って分速約6万文字ペースですよ……既に速読術のなかでも廃人Lvですって。殆どフォト・リーディングしちゃってる。
それと本を汚すのは三色ボールペン&レバレッジ・リーディングの主張ではメインですし、ここまで見てきた読書法をまるごとごっそり実践している感じ。
できる人……いるんだなぁ。だからといって自分にできるとまで夢を見れませんけど。

あとは間違えやすい論理のパターンについて語っている点は自分としては興味深かった。
著者が言うには、誰にでも間違えやすい論理のパターンがあり、そのパターンは共通しているという。
<blockquote>古典的な論理学の中に、正しい推論規則について述べたものがあります。たとえば、虚偽論、誤謬論、詭弁論などと呼ばれているものです。その辺を一応勉強しておくといいですね。(中略)基本的な推論規則を頭に入れておかないと、普通の人はついつい善意の誤謬を犯してしまいがちです。新しいところでは、セマンティクス(意味論)、シンタックス(統辞論)について学んでおく事も必要ですね。
</blockquote>
これに関しては、突っ込もうにも全く何も勉強していないので、「そーなのかー」としか言えないんだけれど、何かの折に(とはいってもできるだけ早く)本を読んで勉強したいなと思った。
こうして書いていても、ひょっとしたらミスを犯しているのかも知れない……そう思うと、未熟だなとこぼしたくなるし。


▽再版本
・<a href="http://mediamarker.net/media/0/?asin=4167330083" target="_blank">ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫) (文庫)</a>

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年5月1日
読了日 : 2009年1月23日
本棚登録日 : 2019年5月1日

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