むらさきのスカートの女

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本棚登録 : 165
レビュー : 30
著者 :
きよさん 小説   読み終わった 

不気味な腫物はどこにでもいる。相手を身体ではなく服の特徴で捉え「紫女は私の知っている誰誰に似ている」と羅列する入り方、巧い。語り手のお膳立てを機に紫女は普通の女になる。ともすれば語り手が変…影が薄すぎる。職場、女の嫌な団結力ある環境なのに、語り手はハブられるでもなく最初から数に入っていない。至近距離で紫女をずっとストーカーしているのに最後まで気付かれない。そんな語り手が、人から「黄色い〜の女」と呼ばれるのを予感する場面にはゾクッとした。最後には実際紫女の位置に語り手がいる。紫女を追い回す女は紫女になった。

この作品では、ミイラ取りがミイラになった。だが、本の中で描かれているように、不気味な腫物はどこにでもいるし誰でもなり得る。あちら側を、遠巻きに見てネタにしているこちら側の人間も、いつの間にかあちら側にいるかもしれない。これを描くとなると、おどろおどろしい物語になりそうなものなのに。この本では、語り手の目線で淡々と日常が綴られる。なのに、読み手は不穏を、予感を禁じ得ない。私は作者の他の作品の方が好きだが、むらさきのスカートの女にしても、いったい他の誰にこんな物語が描けるだろうかと思う。すごい。

レビュー投稿日
2020年3月29日
読了日
2020年3月29日
本棚登録日
2020年3月29日
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『むらさきのスカートの女』のレビューへのコメント

きよさん (2020年3月30日)

考察をぐぐると、”透明な存在である「わたし」が「むらさきのスカートの女」に知人の要素を重ね、さらに変わった存在として認識し、ストーキングしていく姿は、自分も個性的になりたいと言っているようにも思えます。(https://tartom7997.net/bookreview-purple-skirt/#toc5 )”って。個性的で異常に目立つ存在に憧れる、影の薄い女の話、と読むこともできるのか。面白い。

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