迷宮の扉 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2022年7月21日発売)
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金田一耕助が立ち寄った竜神館なる館で発生した殺人事件。それは莫大な遺産を巡る愛憎劇の前触れに過ぎなかった!中学生雑誌に連載された表題作と、他2編のジュニア向け短編が収録された作品集。

『迷宮の扉』
金田一が暴風雨から逃れるために訪ねた竜神館。そこで館の主・日奈児(ひなこ)の誕生日、ケーキにナイフを入れるためだけに訪れる男が銃殺された。金田一は莫大な遺産相続を巡る連続殺人へと巻き込まれていく──。

偶然に訪ねた館で遭遇した殺人から、世界も謎もどんどん広がっていく展開に読む手が止まらない。遺産相続争いに愛憎が絡みついていく描写はさすが。中学生雑誌に連載されたということで、ジュブナイルではなくミステリ色強めの仕上がり。最後の最後まで気が抜けない悲劇の連続から目が離せない。

展開はスピード感たっぷりでスリリング!その反面、終盤が慌ただしく進み、この伏線は回収されたっけ?となる場面も。あと、犯人以上にとある人物がおぞましく、ラストはそれでいいの?!とツッコまざるを得ない。人の心こそ広大な迷宮だわ…。その扉を開けて入っても幸せになるとは限らない。

『片耳の男』
医学生・宇佐美慎介が偶然に助けた少女・鮎沢由美子。片耳が欠けているチンドン屋の男は、鮎沢兄妹のもとへ毎年8月17日に届くある物を奪おうとしていたらしく──。

18ページほどの短編ながら、ミステリもドラマも読後感がいい作品。父が事故死した日から毎年送られてくるプレゼントに「おとぎ話の贈り物」と名付けてたのがロマンチック。不気味なチンドン屋に遭遇するシーンから始まるのは横溝先生らしいつかみだよね。金田一は登場しないけれど、慎介がいい味を出してくれてて好き。

『動かぬ時計』
山野眉子が小学生のころから、毎年5月15日に送られてくるプレゼント。その中でも特に、金の時計を大切にしていた。ある時、その時計が動かなくなってしまい、修理しようと試みた眉子だったが──。

こちらも14ページという短編。しかも同じように贈り物をテーマにした作品になっている。母がいない眉子の境遇、そこに届く贈り物、父との日々を描くドラマに、ミステリをほんのちょっぴり隠し味にしたストーリー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年7月28日
読了日 : 2022年7月28日
本棚登録日 : 2022年7月28日

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