アルファベットのオブジェが散らばる山荘に招かれた人々。そこには手にした人々を不幸にしてきた「創生の箱」があった。そして、ドイツで16年前に起きた事件のように、空だったはずの箱から死体が発見されて─。
復刊の声も頷ける面白さ!個性的なキャラに怪しい館と箱、雪のクローズドサークルと揃った仕掛け。手がかりはまるで山荘に散らばったアルファベット。あからさまに転がっているのに、並べ替えなければ意味を持たない言葉のよう。すべての手がかりが意味を持った瞬間の鳥肌がすごかった。
売れない役者で語り部の未衣子。先輩で看板女優だが舞台を降りるとだらだらな美久月。名も感情も家族も過去の記憶も持たないが、不可能犯罪を必ず解く探偵・ディ。この凸凹トリオが軽妙に事件をかき回し、暴き、読者を叩きのめしてくれる。文章という雪の中に忍ばせた伏線の数々にはやられたの一言。
人の心を凍らすのも溶かすのも最後は人なのだ。人はクローズドサークルに閉じ込められるだけではなく、自分から閉じ込められているのかもしれない。人の輪が織り成すドラマが最後の雪を溶かす演出は印象的だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年10月21日
- 読了日 : 2021年10月21日
- 本棚登録日 : 2021年10月21日
みんなの感想をみる