早春の少年―伊集院大介の誕生

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  • 講談社
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『及川 徹』は、今では名探偵として有名人になった、かつての同級生である『伊集院 大介』を訪ね上京してきた。伝えられなかた言葉を伝えるために。30年ぶりの再会ではあったが、今では誰も呼ぶことがなくなったあだ名で呼ばれたとき、あの特別な日々の記憶が鮮やかに甦るのだった。

大きくもなく、かといって小さくもない地方都市『平野』。市の中心を流れる『姫川』の名の由来ともなった数々の伝承が残るのどかな土地にも、戦後の復興の波が押し寄せ、人口が激増した年であった。

中学2年ももうじき終わろうかという時期に、彼は転校してきたのだった。すらりとした体型に、色が白く整った顔。なんといっても、アナウンサーの話すような標準語は、平野の子どもたちにとって、まったく異質の者だった。徹はそんな彼に惹かれ、また自分についても深く見つめるようになる。

平穏だったはずの平野に多発する動物の虐殺。そして、労働者のバラバラ死体が川に流され、やがて凄惨を極める一家惨殺事件が起こる。徹は、事件の真相をつきとめようとする大介と行動を共にするのだった。


たぶん、『伊集院大介』シリーズがあるんだろうけど、そちらは読んだ事が無いです。推理はさておき、少年の成長物語ですね。早熟でずば抜けている大介少年。自分でも自分を『特別』と自覚していて、子どもとして扱われる事に、憤りを感じている。一方の徹は、典型的な土地の少年。周りはみな似たり寄ったりで、これまで自分の人生など考えた事もなかったのが、異質なものにふれ、初めて違う生き方について考える。

特別とはいっても、そこは少年。そのある意味高慢なぐらいの思いを隠さないところが子どもなのだとは気づけない。ハハ、確かに大人にとっては、鼻につくだろうし、ひやひやさせられるだろうな。まあ、一度くらいその鼻っ柱が折れるのは良い経験と言えるのであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2010年1月22日
読了日 : 2000年7月4日
本棚登録日 : 2000年7月4日

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