父帰る・藤十郎の恋――菊池寛戯曲集 (岩波文庫)

制作 : 石割透 
  • 岩波書店 (2016年10月19日発売)
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本棚登録 : 97
感想 : 7
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 菊池寛は戯曲の形でも抜群のストーリーテラーです。
 小説の形でも発表している、藤十郎の恋・敵討以上(恩讐の彼方に)・入れ札のほかに、精神薄弱の兄にとってまともな人間に戻るほうがよほど不幸ではないかとシニカルに指摘し今では放送禁止用語が散りばめられた’’屋上の狂人’’、坊主どもの禁犯を唯物主義を逆手にとって趣深く諫めた’’奇蹟’’、家族不幸の父を拒絶する長男とそれでも家族であるが故の絆を押し出した’’父帰る’’、明治維新直前に勤王に就くか佐幕に就くかで家族内や婿候補との意見が割れた様を巧みに描いた’’時勢は移る’’、知恵の足りない腕自慢がかえって不幸を招くという訓話’’岩見重太郎’’、逃げ延びる際に楊貴妃が死を選んだ理由と玄宗皇帝の心境をひねてとらえた’’玄宗の心持’’、ストーカー遠藤盛遠を罠にかけ誤って殺される袈裟夫人に対する夫渡辺渡の複雑な男心を描写した’’袈裟の良人’’、美人のプライドを愉快に書き表した’’小野小町’’、そして、今時の感覚だと夫が妻を殴って普通な描写に面食らいはしたけど夫婦喧嘩は犬も食わぬを取り上げた’’時の氏神’’、どれもこれもオーヘンリー並みのニヤリが続きます。不当に評価が低いのはもったいない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年8月31日
読了日 : 2018年8月31日
本棚登録日 : 2018年8月31日

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