「縮み」志向の日本人 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598164

作品紹介・あらすじ

小さいものに美を認め、あらゆるものを「縮める」ところに日本文化の特徴がある。世界中に送り出された扇子、エレクトロニクスの先駆けとなったトランジスタなどはそうした「和魂」が創り出したオリジナル商品であった。他に入れ子型・折詰め弁当型・能面型など「縮み」の類型に拠って日本文化の特質を分析、"日本人論中の最高傑作"と言われる名著。

感想・レビュー・書評

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  • 昔から日本人の意識の底には、何事も縮めようとする「縮み志向」がある。この志向から、次のようなものが生まれた。
    ・入れ子箱:大小の箱を順に入れ込んで、1つに収める。
    ・扇子  :平たい団扇を、畳んで縮める。
    ・弁当  :広くて大きなお膳を、小さい囲いの中に詰める。

    畳で暮らす日本人の生活空間意識は、欧米人とは、大きく異なっている。
    ・日本人は茶室のような狭い空間で安静を味わうため、広い場所では不安を感じる人も多い。一方、ギリシアの広場文化を生んだ欧米人は、広い空間で安定を求めようとする。
    ・日本と欧米の違いは、子供の叱り方にも表れる。
    欧米の親が子供をクローゼットなど狭い部屋に閉じ込めようとするのに対し、日本の親は子供を家の外に追い出そうとする。

    日本の文化は、内から外に拡がるのではなく、外のものを内に引き入れる縮み志向。
    ・日本は、自国の文化を他者に「教えること」よりも、中国や韓国、欧米から文化を「習うこと」を得意としている。
    ・縮み志向の日本人は「拡がり」に弱い。日本の外の「未知の空間」に置かれると、判断力を失い、どう振る舞えばいいのか、見当がつかなくなってしまう。
    ・拡がり志向によって失敗したのが、豊臣秀吉。天下を統一し、自信を強めた秀吉は、広い世界に出ようとして文禄・慶長の役を企てたが、拡がり志向に転じた途端、判断力を喪失し、出兵は失敗に終わった。

  • 01058

  • 縮み志向はあると思うが、全部が全部そうかなぁ?と思ってしまった。

  • 著者:李 御寧(1934-2022) 文芸評論
    解説:高橋 秀爾[たかしな しゅうじ](1932-) 美術史・美術評論。

    【目次】
    目次 [003-006]
    題辞 [008]


    第一章 裸の日本論
    1 「日本論」祭り
      幻の衣を着た「日本論」
      「甘え」は日本独特の言葉ではない
      海草と人糞の日本論のウソ
    2 フォークと箸
      東洋を忘れた視線
      日本は本当にタテ社会か
      西洋文化のヒマワリ
    3 小さな巨人たち
      一寸法師との出会い
      豆と「ワン」の接頭語
      島国の風土論でいくな
    4 俳句と大豆右衛門
      障子の穴で見る世界
      ラブレーの巨人と江戸人の夢
      小咄・国民性比較論

    第二章 「縮み志向」六型
    1 入れ子型──込める
      東海の小島の磯と蟹
      「の」を重ねる不思議
      涙一滴に縮まった海
      「縮み」の意識の文法
      入れ子の箱
    2 扇子型──折畳む・握る・寄せる
      日本オリジナルの風
      高麗扇か日本扇か
      扇子のマトリックス
      握りめし文化──引き寄せる
      動く美術品
      トランジスタ文化は平安時代からあった
    3 姉さま人形型──取る・削る
      人形の国
      ちひさきものはみなうつくし
      手足を取る
      仮名作りの発想と「どうも」文化
      集約と背面美
    4 折詰め弁当型──詰める
      食膳を縮める
      日本の食物と韓国の食物
      詰められないものは「つまらないもの」
      和字と国訓の意味
      利休ねずみ
      文庫本とコンサイス
    5 能面型──構える
      ストップ・モーションの波
      「構え」の動作
      能面の中間表情
      じっと見る視線
    6 紋章型──凝らせる
      聞くことと見ること
      族譜と家紋 半てんとのれん
      名刺と飯
      「名詞」から「動詞」への文化論

    第三章 自然にあらわれた「縮み」の文化
    1 「綱」と「車輪」
      庭文化の生まれ ありのままの山水
      借景の論理
    2 縮景──絵巻としての庭
      シマと呼ばれた庭
      回遊式庭園は名勝の写生画である
      石組のレトリック
    3 枯山水──美しき虜
      石と砂の沈黙 三万里程を尺寸に縮む
      にわとりになった自然
      ゴミをゆるさない日本人の自然観
    4 盆栽──精巧な室内楽
      ベーコンの植木と家光の木
      見る自然から触れる自然へ
      樹の仕立てと風景描写
      手の上にのせられた風と土
    5 いけ花──宇宙の花びら
      一輪の朝顔
      花の美しさを見るな、その組み方を見よ
      神が作り出せなかった空間
      枝の空間性と花の時間性
    6 床の間の神と市中隠
      日本の舞いと神のはしご
      神棚に招かれた神々
      仏壇とテレビ
      飲まれる自然
      「市中の山居」
      日本の旗にはイデオロギーがない

    第四章 人と社会にあらわれた「縮み」の文化
    1 四畳半の空間論
      マッチ箱からウサギ小屋まで
      鴨長明の住宅観
      畳と生活空間の単位
      広場と茶室
      狭い空間への回帰
      方丈の伝統
      日本のコロンブスが発見した新大陸
      にじり口の演出
    2 達磨の瞼と正坐文化
      精神の液体──お茶とお酒
      茶がない茶会
      狭き門に入れ
      「立つ」ことと「坐る」こと
      正坐と気をつけ文化
      身は刀、身は琴
      行動の三種の神器──ハチマキ、タスキ……
    3 一期一会と寄合文化
      二つの傘
      「死」の心
      咲く花より散る花を愛する
      一生懸命の生き方
      「腹切り」の美学
      寄合文化 肌で感ずる触れ合い文化
      イデオロギーを超える心
      交際費共和国!
      通り魔は日本的犯罪
      五、六人のスモール・グループ
    4 座の文化
      一億総俳優 茶三昧の一体感
      人の茶の湯になるな
      日本料理とマナイタ
      能舞台の美学
      花道で会う観客と演技者
      連歌とゴルフ
    5 現代社会の花道
      売る人と買う人の「座」
      外人が見た日本の駅
      ホームの押し屋
    6 「物」と取合せ文化
      数寄──物への愛
      物で考える
      茶碗ならずんば死を
      実感信仰という宗教
      三種の神器とオッチョコチョイ

    第五章 現代にあらわれた「縮み」の文化
    1 和魂のトランジスタ
      竜馬は忙しい
      トランジスタの逆転ホームラン
      小さい手とラジオ・ブーム
      和魂とはなにか
      ウォークマン文化はいかに作られたか
      石庭と電卓
      触わってみれば、わかる
      トウモロコシと農林10号
    2「縮み」の経営学
      新しいアイディアは小藩から
      ピグミー・ファクトリー
      QC・小集団活動が作った神話
    3 ロボットとパチンコ
      なぜ産業ロボットの名は日本式か
      パチンコの歴史
      小さな玉と機械との対話
    4 「なるほど」と「メイビー」 
      宇宙と茶の間のエレクトロニクス
      二丁の鉄砲が三十万丁になる
      二番手で行く
      スモール・イズ・ビューティフル

    第六章 「拡がり」の文化と今日の日本
    1 国引き文化
      星を知らない人たち
      内と外の二つの世界
      一匹狼の悲劇
      日本人の三Sと外交舞台
      「世界八分」にされるな
    2 サムライ商人
      畸型の一寸法師
      ホンダに乗ったサムライ
      この道はいつかきた道
    3 広い空間への恐怖
      大地に移した盆栽
      秀吉はなぜ失敗したか
      太平洋戦争で負けたのは
    4 トロッコとイカダ
      芥川のトロッコ
      ハックルベリ・フィンの冒険
      細石が巌になる夢
    5 「名誉白人」の嘆き
      白人になれる夢
      コウモリの栄光と悲劇
    6 鬼になるな、一寸法師になれ
      枯野の船
      だれが縮めるのか? 何を縮めるのか?


    学術文庫版あとがき(二〇〇七年新春 ソウルにて 李御寧) [338-339]
    解説(高橋秀彌) [340-342]

  • <愛蔵版>「縮み」志向の日本人(1984)学生社

    二章 「縮み志向」六型
    1. 入籠型-込める
    2. 扇型-折畳む・握る・寄せる
    3. 姉さま人形型-取る・削る
    4. 折詰め弁当型-詰める
    5. 能面型-構える
    6. 紋章型-凝らせる

  • これはすごい。最初の指摘にノックダウン。日本人論を唱える論者は、欧米と日本との対比で、日本の独自性を語りがち。でも日本は文化圏的には、明らかに中国・韓国と近く、「日本的」と称される内容は、中国・韓国でも成り立つことが多い。
    では、中国・韓国と比較して、日本独自と言える文化の傾向はなにか?それが「縮み」。
    別の言い方をすると、勝手にこちらへ湧いてくる。遠くにあるものを、身近な狭い範囲に想像力豊かに、シンボルとしてのアイコンを付置することで、作り出す。普通、そうした霊的なものは、ここからそちらへ飛翔する傾向がある。

  • 日本を欧米と比べるのではなく、共通性の多いアジアの中で比較したほうが日本文化の特質がよく分かるという視点から出発した、韓国人学者が書いた日本人論の名著。折詰弁当、扇子、俳句から現代のロボットやパチンコまで、身近な材料から本質に迫る著者の感性と分析力が見事です。
    (選定年度:2019~)

  • 俳句、扇子、折り畳み傘、弁当、詰める

  • 第二章の縮みの六型が妙。

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