志ん生の右手: 落語は物語を捨てられるか (河出文庫 や 19-1)

著者 :
  • 河出書房新社 (2007年1月6日発売)
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感想 : 5
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井上ひさしとてんぷくトリオのコントの評など興味深かった。
新劇は判らないことを判らないまま書けば受けるが、コントは具体的であるほど受ける。
非日常的な舞台設定の人物を日常に引き摺り下ろす処に面白さがあるという指摘などだ。

他にも松旭斎天一、天勝のショー的奇術芸の興亡から、アダチ龍光の語る奇術の出現の件も面白い。

更に、マルセ太郎や色川武大、園朝と春団治比較など面白い話題があったが、
一番興味深く読んだのが、タイトルにある「落語は物語を捨てられるか」だった。

落語とは、平たく言って、落語家が物語を語る芸だが、二人の演者が同じネタ(物語)を続けたら、
2度目の物語は同じお客様に受けるのか否か・・・。
そもそも今の落語は物語に頼り過ぎてやしないか、滑稽な物語の語り手に化していないか、
という考察だった。
1948年の戸坂康二氏の著書では、
落語紹介アナウンスは「次は文楽さんのはなしです」でいいのだと記されているそうだ。

本来 自由奔放、口から出まかせ、言葉を巧みに操る演者の語り口を聞かせる芸なのではないか、
志ん生が面白いのは、人名を間違えても筋が飛んでも、語り口が面白かったからだと思う。
ラジオの人気DJ然り。高田純次然り、柳沢慎吾然り、勝俣州和然り・・・。
マチャアキ、小野ヤスシなど一昔前のTVタレントや、さだまさしなどのフォーク歌手も
みなしゃべりが巧く、諧謔センスが素晴らしいですね。
ハッキリ言ってこれが出来る人にとっては、物語もギャグも飾りに過ぎないんでしょう。強い!
などと、いろいろと思いを馳せる評でした。

落語、演劇・演芸の評論家 矢野 誠一が'70~’80に真面目に書いた随筆を収録。
話題は、落語から浪曲、舞台、コントまで、著者の活動範囲全般にわたる。
出版には小沢昭一さんが一枚噛んでるようで。巻末には小三治の解説付き。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 落語
感想投稿日 : 2013年11月15日
読了日 : 2013年11月15日
本棚登録日 : 2013年11月15日

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