異邦人 (新潮文庫)

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本棚登録 : 8462
レビュー : 1064
著者 :
制作 : 窪田 啓作 
くらげさん 小説:作者か行   読み終わった 

「……バカなんですか?」
「いや、だから、異邦人だよ」
さらりと、蛹が言う。
葉月は唸りながら、ぱらぱらと本を捲る。
「要するに、母親が死んだけど別に泣かないし、直後にガールフレンドと遊びに行ってひゃっはーだし、うっかり人殺しちゃったし、世の中的には酷いやつだけど、俺的には別にこれでいいんだぜ、みたいな?」
「……確かに、バカかもしれない」

二人がいるのは、蛹の大学の図書館だった。
蛹は英語の専門書を読んでいる。
その横で、葉月はカミュの全集を読んでいた。
大学は夏休みで、人の出入りは少なく、彼らが陣取っている一角には他に学生の姿はない。
「まあバカはバカなんだけどさ、結局のところ最後の数ページが全てじゃないかな」
「というと?」
葉月は首を傾げる。
「自分が何を感じて生きているかなんて、他人には分からないんだ。でも周りは好き放題に『理解』しようとする。ねえ、泣かない人間は『非情』だろうか?」
「そんなの、人それぞれでしょう? ああでも、そういうのって、説明するの面倒くさいんですよね。もういいか、自分のことは自分が分かっていれば、みたいな」
「ざっくり言っちゃうとそういうことじゃないかな。最後の数ページの、そこら辺の描写が、なんかいいんだよ。宗教も、社会通念も超えて、自分の人生に自分だけの幸福を見いだしたような瞬間がね」
「人を殺さないとそこまで辿り着けないとしたら、やっぱりバカじゃないかとは思いますけど」
「……今ほど自由にものを考えられなかった時代の話だろう? 人の命だって関わってくるんじゃないかな」
蛹は手元の本に注意を戻したが、葉月は暫く唸りながら何か考えているようだった。

レビュー投稿日
2014年8月27日
読了日
2014年8月27日
本棚登録日
2014年6月20日
4
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