密やかな結晶 (講談社文庫)

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本棚登録 : 2381
レビュー : 319
著者 :
ku-sukeさん SF、ファンタジー   読み終わった 

物と、それにまつわる記憶が「消滅」していく島。記憶を失わない人々は秘密警察に連行されていく。フェリーやバラ、鳥、音楽などが失われていくが、「物語」の消滅をきっかけに、世界の崩壊は加速する…
主な登場人物は3人。小説家の女性と、亡妻がその女性の家で昔「ばあや」をしていた縁で女性の手助けをしているおじいさん、女性の担当編集者のR氏。
女性とおじいさんは「消滅」の影響を受けるが、R氏は影響を受けずに記憶を保ち続けているため、記憶狩りから逃れるために女性の家に匿われて隠れている。
女性の書く物語が所々に挿入されて、効果的。
「消滅」を静かな諦観をもって受け入れた人々は、やがて、自分という存在さえ失っていく。大きな流れに疑問を持たずに身を委ね、失うこと・奪われることに慣れていくことが、自己をも失わせていくことにつながる。
自分の存在までなくした人達と対象的に、最後まで自分を保って隠れ家から光の下へ出ていくR氏…その逆転が鮮やかで、印象に残った。

それと、この文庫を、私はブックオフで105円で購入した。105円で手に入れたのが、こんなに奥深くて豊かな世界だったなんて、何だかとても不思議な気がする。私自身は、この本はこれからも手元に置いて、慈しみたいと思う。

レビュー投稿日
2013年5月17日
読了日
2013年5月17日
本棚登録日
2012年7月5日
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