納屋を焼く、映画化に際して久々に読んだが、また読み味が変わっていてぞわっとした。主人公が既婚者であることを、私はほとんど意識したことがなかったが、今回に至っては彼が既婚者であることがとても重要なファクターな気がした。既婚者でありながら、ガールフレンドと出会った主人公。彼女といるとなんだか落ち着くんだ的なことを言っているのだけれど、その実それはきちんとしたコミットメントではない。そのことは、彼女が失踪後に、彼から痛烈に責められる。「彼女と連絡が取れない」と言う彼に対して「どこかにふらっと出かけてるんじゃない?なんかあの子そういうとこあるじゃん」というようなまるで他人事の答え方をする主人公。それに対して「12月に?一文なしで?友達もいないのに?彼女はあなたのことは信頼してたのに」と。
私は彼のことが気味が悪いとずっと思っていたので、あまりこのシーンに着目していなかったのだけれど、これは彼女に対するコミットのなさが痛烈に批判されているシーンなのだと気づいた。そして、いてもいなくても変わらないし気づかない=納屋であるという等式はぞっとするものがある。村上春樹はこの短編のことを冷たい話だと自分で言っていたが、確かにある種、冷たい話だなあと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2019年2月4日
- 読了日 : 2019年1月31日
- 本棚登録日 : 2019年1月31日
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