天翔る

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本棚登録 : 606
レビュー : 114
著者 :
九月猫さん ま行の作家(国内)   読み終わった 

エンデュランスという馬術競技を初めて知った。
馬術競技というと馬場で行うというイメージだったが、これは外乗コースで行う長距離耐久レースだという。
では映画『ヒダルゴ』のような、人にも馬にも過酷なレースなのかと思ったら、長距離ゆえ過酷ではあるが、馬は労わるレースであるという。
距離にもよるが、6つの区間(レグ)を通過する間に馬の体調を獣医がチェックして、それをパスできないと次のレグは走れない。
もし完走しても、完走後の獣医師チェックをパスしなければ失権する。
ゴールした順位とは別にベストコンディションホース賞というのもある。

その競技をはじめることになったまりもを中心に、まりもが牧場に通うきっかけとなった看護士の貴子、牧場主の志渡、エンデュランスという競技と普及に力を注ぐ漆原たちの話が展開される。

父親と二人暮しのまりも。
学校でいじめを受けはじめたのと同じ頃に父親が事故で亡くなる。
それがきっかけで学校に通えなくなる。

馬との触れあいで自信を得、志渡や貴子の助けで一度は学校に戻るのだが…。
愛情を注いでくれる大人たちや理解してくれる友達がいる。
まりも自身、恵まれた人間関係だということを頭では理解している。
なのに二度目に学校に行けなくなったとき、まりもは常習的な自傷行為にまで及んでしまう。
無条件な愛情・絶対的な安心感・自分を必要としてくれる存在の不在を感じているからだ。
まりもにとってのそんな存在は父親だった。だからいくら周りに恵まれていても「自分だけが一人だ」と感じて時折父親に無性に会いたくなる。

そんな弱さを持ちながらも、競技に対する真摯な強さ、馬との信頼関係、などをエンデュランスを通して培うまりも。
心に傷を持っていた貴子や志渡も、まりもとともに少しずつ前に進んでいく。

本場の大きな大会、テヴィスカップを完走したまりもの帰国後の思いがけない再会。
父親との想い出の懐かしいある名前。
光がいっぱい溢れるような、いろんなものが天に昇っていくような、希望を感じられるラストになっている。


読者モニターとしてプルーフ版にて読了。

レビュー投稿日
2013年3月8日
読了日
2013年3月5日
本棚登録日
2013年3月8日
10
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『天翔る』のレビューへのコメント

cecilさん (2013年3月15日)

面白そうですね〜!!最近の村山さんの作品は割と官能路線だったので、そろそろ久々に村山さんの王道のヒューマンドラマが読みたいと思っていました。
このレビューを読んで、エンデュランスという珍しい題材を絡めて人の心の動きを感じられそうな作品みたいで物凄く読みたくなりました。
そういえばスポーツを絡めた話って村山由佳さんには珍しいですよね。
発売されたら絶対に読みます!!

九月猫さん (2013年3月15日)

cecilさん、こんばんはー♪
コメントありがとうございます!

そうなんですってね>最近の村山さんは官能路線
村山さんの作品は少ししか読んだことなかったのだけど、
さわやかなイメージがあったのでビックリしましたよー。

エンデュランスは村山さんもなさっているそうです。
馬がお好きで牧場のようなおうちというのは知っていたのですが、
自らこんな過酷な競技をなさっているとはこれまたビックリでした。

アマゾンの発売日が当初8日だったので、8日にレビューをUPしたのですが、
発売日遅れてるみたいですね……。
お時間があってお好みそうなら、発売されたらぜひ読んでみてくださいね!
その折にはcecilさんのレビュー楽しみにしてます~(´▽`)ノ

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