絵物語 古事記

3.84
  • (12)
  • (20)
  • (16)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 231
レビュー : 26
著者 :
kuma0504さん あ行 フィクション   読み終わった 

世に「現代語訳古事記」は多い。易しく書かれた絵本もかなり出ている。しかし、原文の形を残したままに、絵本形式の古事記は、ほとんど例がないのではないかと思う。

古事記は、粗筋も大切だが、細部にこそ命がある。もっと言えば、リズムや比喩表現が大切なのだが、この本にそこまで求めるのは無理だ。そのかわり、この本ならではの絵画表現が、大人にも数々の発見を持たらすのではないか?と思う。

私は古事記初心者なので、簡単なことに感心する。例えば長い矛で「コオロコオロとかきまぜ」て生まれたオノゴロ島は、いったい何処なんだろと思ったのと同時に、矛の形は明らかに弥生後期にしか出現しない形態で、古事記作者の視点は作成時の700年ぐらい前にしか遡れないのだな、と独りごちた。本当は皇紀で言えば、1300年以上は遡るはずだ。

涙や雫から次々と生まれ出ずる神々の姿は、原文ではイメージが湧きにくいけど、絵で見ると、あゝなんて簡単に神々が出てくるのか、と思ってしまう。神が神を産んで、綿々と繋がって、天皇に成って行くことを「説明」している。この本の大きな特徴だ。

イザナミは火の神カグツチを産んだ火傷がもとに亡くなるのだが、イザナギは怒りに任せてカグツチの首をちょん切ってしまう。その剣の滴る血から戦さや水の神など、災いと生産の神々が次々と産まれる。小さな事件は、次の来たるべき社会の転換点になったことを示していると思う。絵を見ると、まだ子供のような神なのである。小さく産んで大きく育つ。そうやって、日本人は神々(社会)と向き合ってきたのかもしれない。

何年か前、出雲の国で黄泉比良坂(よもつひらさか)と言われる森の中を訪ねたことがある。死の国の住人になったイザナミを閉じ込めた岩も見た。真偽はどうであれ、1300年近くそういう伝説を伝える人々のエネルギーに圧倒された。絵の中の最後の彼女の姿、子供が見たら夢の中に出てくるかな。

ヤマタノオロチは、ずっとキングギドラみたいな姿を想像していたけど、原文をきちんと読めば「ズルズルと体をひきずり」やってくるのだ。絵を見て初めて知った。巨大な大蛇が8匹同時にズルズルやってくるのは、確かに気持ち悪い。

等々、書き出すとキリがないのでここまで。大人が読んでも、大人が読んでこそ、面白い絵本でした。

レビュー投稿日
2019年8月2日
読了日
2019年8月2日
本棚登録日
2019年8月2日
26
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『絵物語 古事記』のレビューをもっとみる

『絵物語 古事記』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする