NHKスペシャル 人類誕生

  • 学研プラス (2018年8月7日発売)
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Nスペの番組は、愉しんで観させてもらった。某CMの原始人ではなくて、最新学術的研究に裏打ちされたリアルな原始人並びに旧人類や新人類の姿は、録画に値する映像だった。私ももちろん録画した。ところが、残念ながら機器の不調で全て消え去った。でも大丈夫。大型Nスペは大抵本になっているということに最近気がついた。しかも、番組に盛り込められなかった情報満載である。

いろんな切り口があるのだが、私の最大関心領域は、実は弥生時代だ。縄文時代の技術や習俗が弥生に引き継がれているように、人類学の知見も弥生に引き継がれているものもあるはずだ。というわけで、それに限って以下にメモしていく。

・アウトラピテクス・アレファレンシス(370-300万年前)で、男女の体格差が起こる。食物を獲得するオスと比べて、メスは子供を産み育てられる大きさがあれば良く、小さいとエサの消費を抑えることができる。大きいからといってオスの暴力性が増したわけではない。犬歯は小さいままだった。

・ホモ・ハビリス(240-160万年前)。最初に石器(オルドヴァイ型石器)を作った可能性がある。狩に使っていない。動物の死体から皮を剥ぎ、肉を削ぎ落とし、骨から脊髄を取り出すために使ったと思える。これが出来るのは人類だけだ。

・ホモ・エレクトス(180-5万年前)。握斧(アシュール型石器)を作成。現代人とほぼ変わらないプロポーション。体毛はなく、全身の汗腺から出る汗で体温調節ができて、長距離走が得意、それで狩を行う。頭髪で直射日光を避け、溜めた汗で脳を冷却させる。常に白目を見せ、視線でアイコンタクトが出来た。唇がめくれて、性的魅力に繋がった。また、肉食を始めたので、出アフリカを180万年前に果たして黒海東のドマニシ遺跡(ジョージア)にたどり着いた。

・ドマニシ遺跡に30-40代の歯のない老人骸骨化石がある。歯が無くなっても数年間は生きていた。人類史初の介護老人の証拠である(180万年前)。彼らは「心」を持っていた。

・ホモ・エレクトスはアジアに出て、北京原人とジャワ原人になって行く。一方、アフリカのエレクトスはハイデルベルゲンシスに進化、ヨーロッパや一部アジアへ。ヨーロッパのハイデルベルゲンシスはネアンデルタール人に。アフリカに残ったハイデルベルゲンシスはホモ・サピエンスへ。

・ホモ・サピエンス(新人20万年前-)で初めて人類は複雑な石器や道具を作った。七万年前に埋葬やおしゃれの貝殻アクセサリーを作って、想像力と芸術性があることを証明している。巧みに話すことの出来るサピエンスは物語も作っただろう。

・ネアンデルタール人(旧人30ー4万年前)が滅亡したのは、「ハインリッヒ・イベント」という氷河の滑落による海流変化のヨーロッパ気温の乱高下のせいだ。極端な暑さと寒さが10年単位で入れ替わる(最終氷期は1万年前に終わり、現代は間氷期)のについていけなかった。最高20人ほどの集団しか作れなかったために、数百人の集団を作って協力して食料を確保したサピエンスに負けてしまう。

・約7.3ー6.3万年前には、少なくともホモ・サピエンスはスマトラ島まで達していた。そこから、氷期で100m低い海水面を利用してオーストラリアまで海を渡りアボリジニの祖先になる。

・約4ー2.5万年前、大陸と北海道は地続きだった。大型動物を追って、日本人の祖先は寒さを乗り越えて歩いてやってきただろう。4万年前にサピエンスがシベリアに到達できたのは、骨製の縫い針を発明していて革製の防寒服を作っていたから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2019年6月3日
読了日 : 2019年6月3日
本棚登録日 : 2019年6月3日

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