永遠の0 (講談社文庫)

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著者 :
kuma0504さん あ行 フィクション   読み終わった 

この作品は映画化されるらしい(2013年12月公開)。読んで分かったが、ヒットする要素が満ちている。一つは、ジブリプロデューサー鈴木敏夫の云う二つの要素がある。「一人称の目でつくった映画。これは観客が感情移入できるんです。しかも、ここには現実ではありえない感動がある。この二つの要素をかね揃えれば映画はヒットする」(「映画道楽」39p)もう一つこの作品には小説としてヒットする要素があり、映画にもそれは有効だろうと思う。それは「主人公の宮部久蔵とは何者なのか」という謎を最後まで引きずることに成功したからである。神風特攻隊員にあるまじき死ぬのを恐れる臆病者、しかし天才飛行士、彼はなぜ零戦搭乗員になり、「必ず生きて帰る」と言っていたのにも関わらずなぜ特攻隊員に志願したのか。その謎を宮部久蔵の孫が生き残りの戦争体験者の話を聞く中で、解明していく。と同時に、とても過酷で生き残った兵士はほとんどいなかったといわれる海軍戦闘機乗りたちの現実と、彼らから見た第二次世界大戦を浮き上がらせてゆく。

先の記事(「このろくでもない、すばらしき日本」)で私はこのように書いた。


いま、百田尚樹の「永遠のO」を読んでいる途中なのですが、この中で現代の姉弟が第二次世界大戦の戦略批判をする場面があります。

戦争当時の長官クラスが強気一点張りの作戦ばかりとって、主人公の宮部のような優秀な兵士たちをたくさん死なせた一方で、自分が前線の指揮官になった時には突然弱気になる。これは「構造的なもの」があるのではないか。彼らはペーパーテストで出世して来た人間である。彼らはマニュアルには強いが、そうでない場合には弱い、ミスを恐れる。そして自分が間違っているとは思わない。(一方、アメリカは結果責任をきちんと取らせるらしい)そして、高級士官は、尽く失敗の責任を取らなかった。

まだ結末を読んではいないが、これは現代の合わせ鏡だと作者は言いたいのだろう、と思う。2006年の作品ではあるが、原発事故がそれを見事に証明した。


‥‥‥‥最後まで読み切って、多くの若者たちにわかりやすい読み物を提示したかったのだろう、と思った。大きな戦略的な間違いといくつもの戦術的な間違いを犯した戦争指導者たちの愚かさを糾弾するのと同時に、それを遂行した若者たちの名誉を回復したかったのだろう。

しかし、どこか私には違和感が残る。
ストーリーテラーとして技巧的なのである。最初に謎を提示して、それを解決してゆく方式を他の著作でも採っているらしいというのがひとつ。官僚主義批判は手垢のついた戦争批判なのだということがひとつ。

それでも、感動的な物語だったということは変わりない。しかし、この「感動」。作者の「戦略」なのではないか?という気がしてならない。

もしかして、誰もが感動出来る話で間口を広げて、やがては自分の本当に書きたいものを売ってゆくという「戦略」なのではないか。そうではないことを祈りたいのだが‥‥。というのも、現実世界で、著者は以下の様な発言をしていることをつい最近、知ったからである。


『Voice』4月号2013/3/9

憲法改正で「強い日本」を取り戻せ いまこそ誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を開けるときだ

 対談「渡部昇一(わたなべしょういち・上智大学名誉教授)×百田尚樹(ひゃくたなおき・作家)」

〈抜粋〉

百田 日教組の教職員は子どもたちに、「日本は侵略戦争を行い、アジアの人々を傷つけた」「日本人であることを恥ずべきだ」ということを教えてきましたからね。そのような誤った知識を死ぬまで持ち続ける日本人も多い。広島県のある高校は修学旅行で韓国に行き、生徒たちに戦時中の行為について現地の人に謝罪をさせたとも聞きます。世界中を見渡しても、そのような教育をしている国はどこにもありません。

百田 「侵略戦争」といっても、日本人は東南アジアの人々と戦争をしたわけではない。フィリピンを占領したアメリカや、ベトナムを占領したフランス、そしてマレーシアを占領したイギリス軍と戦ったわけです。日本の行為を「侵略」と批判するなら、それ以前に侵略していた欧米諸国も批判されてしかるべきでしょう。

百田 日本の人口1億人に対して、自衛隊の隊員数は25万人です。海外と比較をすると、スイス軍は人口780万人に対して、軍隊は21万人もいます。しかも現役を退いたら、60歳ぐらいまでは予備役として登録される。一家に1丁自動小銃が配布されており、日常は普通の仕事をしていても、事が起きれば戦場に赴く。歴史的には「永世中立国」として200年以上戦争をしていないわけですが、軍隊をもつことは、戦争に対するもっとも有効な抑止力であり、平和の維持にはそれだけの労力がかかることを理解しているわけです。

百田 だからこそ安倍政権では、もっとも大きな政策課題として憲法改正に取り組み、軍隊創設への道筋をつくっていかねばなりません。世界の約200か国のうち、軍隊をもっていない国は、モナコやバチカン市国、ツバルといった小国をはじめとする27か国しかない。日本のような経済大国がそれに当てはまるのは異常なことです。

百田 世間では、「憲法は神聖で侵さざるべきものである。改正するなんてもってのほかだ」という、「憲法改正アレルギー」のような意識が蔓延しているようにも感じます。しかし世界中のどの国も、憲法改正はごく普通に行っている。アメリカは18回、フランスは24回、ドイツは58回、メキシコに至っては408回も改正しており、世界最多の回数といわれています。(略)

百田 アメリカも大東亜戦争で痛い目に遭っていますから、もう二度と日本が立ち向かえないようにした、ということですね。9条で「交戦権の放棄」を押し付けたのもそうです。いまの日本には自衛隊がありますが、9条を厳密に解釈すると、相手に銃を向けられて引き金に指がかかってもいても抵抗できない。向こうが撃ってくれば初めて反撃できますが、それも最低限のものに限られ、たとえば一発撃たれて十発撃ち返したら、過剰防衛として処罰される。こんな馬鹿なことはないでしょう。


小説は所詮エンターテイメントの世界、普通はこういう「時評」にその人のリアルな認識が出ると思う。「侵略の定義は決まっていない」と宣ったのは、現在の日本国首相ですが、本屋大賞受賞者のこのお方も「本気で」そう思っているようです。なおかつ、手垢の付いた「憲法改正アレルギー批判」もなされており、自民党の憲法改正草案も全面的な賛成に回りそうです。

おやおや、と言いたい。

レビュー投稿日
2013年5月8日
読了日
2013年5月8日
本棚登録日
2013年5月8日
16
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