漫画ひりひり

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レビュー : 31
著者 :
kuma0504さん ま行 フィクション   読み終わった 

1989年の2月9日、手塚治虫が亡くなった日に細川歩は大分県の専門学校の漫画コースの面接を受ける。平成が始まった頃の漫画家志望の青年たち3人の群像を、テンポよく描いた小説である。当然ラストの場面は、平成31年の2月9日前後になる。

私は漫画家になりたかった。細川歩は18歳で漫画家を志したけど、私は18歳前後で諦めた。ジャンプで鳥山明の連載が始まって、私には才能はないと早々に思ったからだ。実はそのあとマンガ編集者になりたいと思って、その頃の(私基準の)主要連載漫画約100作品を全て(立ち読みや喫茶店で)チェックするという事も4年以上は続けていたけど、いつしかその習慣もなくなった。平成元年のこの年、『ドラゴンボール』『寄生獣』こそはチェックしていたが『ベルセルク』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』は、もう読む事もなかった。だから、漫画家志望青年たちの夢も挫折もいろいろと共感する。だから、漫画家志望青年たちの技術の高さやマーケット感覚を重視する姿勢には、それよりも大切なことがある、とつい思ってしまう。

漫画を好きでいるためにけじめをつける。佳奈さんもそうだった。みんな漫画が好きで、それだけはどうにもならなくて、ちがう道を歩き出す。(180p)

そうなんです。好きだから嫌いでいたくない。だから諦める。だから私も時々傑作に出会いたくて、未だいくつかの漫画をチェックしている。漫画が大好きだから。「ひりひり」するような痛さと心地良さと。

細川歩くんは、たった一年で劇的に変化する。細川歩くんも「それよりも大切なこと」を未熟ながら掴む。大分という東京から見たら田舎の、小さな専門学校という普通成功しないところで、それでも此処は日本なんだ、才能は開花するのだ、というメッセージがとても気持ちよかった。
2019年4月10日読了

レビュー投稿日
2019年4月10日
読了日
2019年4月10日
本棚登録日
2019年4月9日
9
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