丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

4.03
  • (742)
  • (871)
  • (508)
  • (67)
  • (10)
本棚登録 : 6734
レビュー : 796
著者 :
kuma0504さん は行 フィクション   読み終わった 

シリーズ中、屈指の読み応えであった。全4編を、主人公を説明することで順に批評する。

「丕緒の鳥」
丕緒(ひしょ)。慶国の祭祀吉礼において催される射儀を司る責任者。官吏なので仙籍に入り、歳を取らない。悧王以降4代に仕える。陶製の鳥を射て、美しい音を立て華やかに砕ける事を愉しむ儀式を司り、そのためだけに存在する。鳥とは鵲(かささぎ)でなくてはならない。丕緒は自問自答する。
ーーいったい何のためにこんな儀式があるのか。
百数十年生きても、尚わからない。蓋(おもうに)「極める」とは斯くの如しか。

「落照の獄」
瑛庚(えいこう)。柳国の国府(最高裁判所)の司刑(裁判長)である。法治国家の体裁を採り、合議制で結審する。殺罪などの大罪に対する刑罰の最重刑は死刑つまり「大辟(たいへき)」と云う。調べると、この言葉は四書五経の中の言葉だった。しかも、始皇帝の焚書坑儒により、大半の原典は我々の世界では喪われている。柳国では活きている。この短編には、その頃の専門用語が多く出てきて、その分瑛庚の決する最終刑はわかりにくい。しかし1番のカギは、主上(王様)が「大辟を用いず」方針に責任能力を持たなくなったことにある。我々世界の問題(死刑是非論)とリンクしているようで、実はリンクしていないことは留意すべし。古代漢字を現代小説に用いるために、著者は、奄奚(げなんげじょ)、豺虎(けだもの)、殺刑(しけい)、刑案(うったえ)、徒刑(ちょうえき)、刑徒(しゅうじん)等々と翻訳してみせる。不亦面白乎(またおもしろからずや)。

「青条の蘭」
標仲(ひょうちゅう)。一転、この短編の主人公は、最初からずっと移動し続けていて、ラスト近くで倒れて仕舞う役割。わかりやすい。下級役人の1人で、新しい植物や鳥獣を集めるのが仕事である。何処の国の話かは、最後の最後にヒントのみ与えられる。シリーズファンならば直ぐ判るだろうという憎い演出である。はっきりハッピーエンドか、バッドかは描かれていないが、ファンならば判る。また、王様の長きに渡る不在とは、つまりは国が滅亡に近い処までいくことなのだと、この短編により、よく判るのである。

「風信」
蓮花(れんか)。最後の少女は、不老不死の役人でさえもない。標仲も蓮花も、2013年の文庫書き下ろしらしい。シリーズが始まって、20年以上が経っているのに、つい最近始まったかのようなこの瑞々さは何なのだろう。物語は、正に「月の影影の海」「風の万里黎明の空」の時間軸と慶国内の出来事で物語られる。景麒も陽子も微かにも出てはこない。その中で、正に十二国ならではの出来事で、蓮花は希望を見出すのである。

この本で、年表に新たに付け足す事はなかった。

レビュー投稿日
2020年1月24日
読了日
2020年1月24日
本棚登録日
2020年1月24日
22
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 ...』のレビューをもっとみる

『丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする