死にがいを求めて生きているの

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本棚登録 : 1654
レビュー : 140
著者 :
kuma0504さん さ行 フィクション   読み終わった 

初、朝井リョウ。物心ついた頃からゲームやSNSがあって、ゆとり教育やら同調圧力があるのを当たり前の社会だと思って生きてきた世代の、それでも対立と和解をどう解決して行くのか、探って行く物語。のように思えた。納得できなかった。以下、なぜかを述べる。

「俺は、死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を、生きていい時間にしたいだけなんだ。自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてないんだから、その時々で立ち向かう相手を捏造し続けるしかない」(398p)

「自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてない」なんて、平成生まれのこの子は、どうしてそんな風に自分のことを思ってしまうんだろう。どうして、いつも誰かにどう見られるかが、何かの基準になるのだろう?こんなに若いのに、何を焦っているんだろう?丁寧にその心理を幼少の頃から辿っているはずなのに、やはり私にはピンとこない。

組み体操のピラミッド存続問題やRAVERSや大学寮存続問題、無人島仙人問題など、現実にあった問題からモチーフを「強引に」自分のテーマに引き入れる書き方は、感心しなかった。揶揄はしていないが、あの事柄をある程度知っている人にとっては、揶揄されていると怒るかもしれないような書き方もあった。安藤くんじゃないけど、この作者に対しても「こうやって喋って満足するだけのおままごとはもう、終わり」にしよう、と言いたくなる書き方もあった。朝井リョウは何を焦っているんだろう? 自分に求められている「役割」を過剰に意識し過ぎているんじゃないか?こんな風にホントにあったことをなぞるならば、表層だけを見るんじゃなくて、「核」の部分を描いて欲しい。その表現、作者は、その部分で1番もがいているのかもしれない。そこは伝わってくる。でも、まだ足りない。決定的に何かが足りない。人気作家だけど、こんな感じならば、認めるわけにはいかない。

レビュー投稿日
2019年8月7日
読了日
2019年8月7日
本棚登録日
2019年8月7日
16
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『死にがいを求めて生きているの』のレビューへのコメント

本ぶらさん (2019年8月12日)

本を読んでないのであくまで想像ですけど、情報、それも商品やサービス(小説や映画といったコンテンツを含む)を売る側からの「隣の芝生はこんなにも青い」的な情報に追いかけまわされちゃってるようなところがあるんじゃないでしょうか? さらに大人になったらなったで、大人としての楽しみや、子供(学生)にはない楽さ加減みたいなものってあると思うんですけど、それが見えないこと。 さらに、就活の大変さやキラキラした職業にはなかなか就けないという現実。それらが10代後半こそが人生においての最上の時(もちろんある意味最上の時だとは思いますけど)のような幻想を生んでしまって、大人になるまでに、世の情報にあふれている「青い芝生」を手に入れなきゃ人生終りみたいな、一種の強迫観念が「焦り」を生んでいるのかなーなんて思いましたw ただ、それは今の時代に限ったことではなく、90年代80年代、それ以前も多かれ少なかれ同じだったように思うんですけどねー。 今は、なんていうか思いやりが商品や情報になっちゃった時代で、それゆえこういうような、「わかってるよ」的な、あるいは代弁的な内容の本(読んでないのになんですけど)が「商品」として出てくるのかなーなんてw

adagietteさん (2019年8月28日)

イイネ ありがとうございます。
そうかぁ 厳しいですね〜 
でも こちらの評もとても面白く読みました。なるほどなぁ ...
私から見ると "息子” 年代の朝井リョウ。
自分の外にあるものは綴れても 女子に比べて言葉でもって自分をさらけ出すことがあまりうまくないのが男性。
まさに ”その部分で1番もがいている”点を 私は評価しました (^^) 

kuma0504さん (2019年8月29日)

本ぶらさんへ。
ご返事遅れてすみません。
そんな全ての世代にもある焦りもあったのかもしれませんが、この世代特有の焦り⁉︎それとも朝井リョウ特有の焦りも、あるように感じました。
文学は細部が大事なので、やはり一読しないとわからないかもしれません。

kuma0504さん (2019年8月29日)

adagietteさんへ。
コメントありがとうございます。
男の子は、どうしても社会と向き合おうとします。
私は基本的に、権力のあるものについては、風刺的に描いてもオーケーだと思っていますが、自分より弱い人たちを風刺的に描く、或いは表層的に描くことは慎重であるべきだと思っています。もちろん弱い人たちを批判的に描いてもいい。けれども、こんな小説では、少なくとも真摯に向き合うべきです。私は居酒屋の場面は現実にあったようにリアルに感じました。けれども、RAVERSや大学寮問題、無人島生活など現実にあった話を取り上げる時には、ネット情報からのみから判断したように感じました。ネットには情報が溢れていて、それなりに取捨選択する技術も持っている人はいます。作者も慎重に取捨選択したように見受けられます。けれども、それでも私は「浅い」と思いました。私が当事者ならばいくつかの点で「揶揄された」と感じたと思う。朝井さんは人気作家なので、力は朝井さんの方が上です。そういう描き方をするべきでなかった。そもそも現実あった問題から、小説に取り込む必要はさらさらないのです。
朝井さんは、平成の子供の立場から平成の問題を描こうとしている。けれども、絶対上から目線になってはいけない。下から見た世界を描くべきです。でも既に朝井さんの立ち位置が、上にあるのならば仕方ない。一作で朝井さんを判断するつもりはありませんが、この本を読んだ段階で、私はそう判断しました。よっぽどのことがない限り、朝井さんの本を読むことはないと思います。

長々とすみません。adagietteさんの意見ももっともだと思います。

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