こいぬとこねこが仲良しで、一緒に暮らしていた頃のお話です。
ヘタウマ絵というのでしょうか。なめらか毛並みのこねこと、逆立つ毛並みのこいぬは、どんな子供でも真似出来そうです。親しみがあって、犬猫いっしょの家はホントにありそうです。
ヨゼフ・チャペックさんのことを知っていますか?
チェコの国民的作家のカレル・チャペックさんのお兄さんで、挿絵画家、舞台芸術家、作家と多才な方でした。弟と一緒に、当時世界を分断し平和を脅かすナチスに批判的な活動をしていましたが、1938年弟が亡くなった翌年、チェコはドイツに侵略されて、ヨゼフさんはナチスの強制収容所に送られてしまいます。そしてなんと、1945年解放の数日前に亡くなってしまったのです。この本には、お兄さんの平和への想いがいっぱい詰まっていました。
1996年版で初めて挿入されたエピソードに「3 10月28日のお祝い」という回があります。「戦争をやめさせ、この国から悪い皇帝を追い出したので、それからは良くなったのだ。その日を忘れないように、この国の人は10月28日には、いつも旗を立てて楽しんでいるのさ」といって、無料で貰える旗を思いっきり立てる計画を立てるのです。
このエピソードは、1968年邦訳の児童版には、解説が必要のせいか、国際情勢のせいか(1968「プラハの春」)、削られていました。でもとっても面白い回なんですよ。こいぬとこねこは、一考します。あの店のおじさんは、赤ちゃん連れだと小旗を渡してくれる。首尾よくお手々に渡してくれて「ニョニョニョニョ」と僕たちは旗を振って帰る。それを代わりばんこ赤ちゃんの振りをしてゲットできる。挿絵には16もの旗を彼らの家の周りに立てかけたカラーの絵があります。近所の人達にも大好評!日本ならば直ぐに炎上しそうですが、チェコの人たちはなんと寛容なんでしょう!10月28日は、チェコのオーストリア帝国からの独立記念日(この時は10周年)でした。今も祝日だそうです。
No.4は、作者のチャペックさん本人が登場します。そして「お話できない」とうんうんうなっている彼のために、こいぬとこねこは話のネタを授けたのです。さて、彼はちゃんとお話書けたでしょうか?これを読んでいるわたしたちは、その内容を知っています。ちゃんと読んで確かめてみましょう!
ああ、なんか、とっても愛おしい!
こいぬとこねこと、チャペックお兄さんによって生まれたこのお話は、今年で101年目です。ずっと長生きしてほしいですね。
- 感想投稿日 : 2024年5月29日
- 読了日 : 2024年5月29日
- 本棚登録日 : 2024年5月29日
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