樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鴎外 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集13)

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レビュー : 26
制作 : 川上 未映子(たけくらべ) 
kuma0504さん な行 フィクション    読み終わった 

第三回配本である。なかなか次に進めなかった。中上健次から一挙に現代日本文学の王道に入る。少し尻込みしてしまった。

しかし、「たけくらべ」を現代文に訳して、とっつきやすくして呉れて助かった。何度も挫折していた樋口一葉の作品を初めて読んだ気がする。

朝に夕に、秋の風がしみわたって、上清の店先の蚊取り線香は懐炉灰に替えられて、石橋の田村屋のせんべいの粉をひく臼の音も、もうほとんど聞こえなくなった。吉原でもいちばんの店と言われる角海老の時計の響きもなんだか哀れな音色をおびて、そうなってくると、一年のあいだずうっと目に入る日暮里の火の光を見ていても、ああ、あれは人を焼いている煙なんだよねと、なんともいえない気持ちになる。(48p)

江戸の名残りのある都会の秋の、喪われた風景。その感覚の鋭さにも初めて気がつくし、実は花魁の妹・美登利と寺の子・信如との幼い恋の話ではなく、2人と長吉、正太郎、三五郎たちの少年少女の群像劇だったことに思い着く。

最後、快活な美登利が急におとなしくなったのは、信如がいなくなったからでも、水揚げがあったからでもなく、初潮があったからなのだ、と(研究者の間では論議があるらしいが)私は自然に思った。あれで、物語の子ども時代は終わったのである。

明治28年にそういう物語が閃光を放って消えたあとに、明治41年明治43年と、「三四郎」「青年」が、古文とはっきり決別し、西洋文学を咀嚼して登場する。現代日本文学の青春時代が始まったのである。

その狙いは良く分かったのだが、やはり夏目漱石と森鴎外の代表作品はこのふたつではない。むしろ、ふたつとも後期作品と比べれば駄作に近い。

明治という時代を知るには、面白い巻だった。特に巻末の明治44年ごろの現文京区(旧小石川区・本郷区)の地図は、とても興味深かった。これをスマホにデータに落として、今度東京散歩をしてみたいと思う。

2015年10月12日読了

レビュー投稿日
2015年10月17日
読了日
2015年10月17日
本棚登録日
2015年10月17日
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