作家アンソニー・ホロヴィッツが本人として登場し、ワトソンとなり、元刑事ホーソーンがホームズとして殺人事件を解決する作品である。今回初めて知ったが、ホロヴィッツは現実でもホントに有名脚本家らしい。いま正にスピルバーグの「タンタンの冒険2」のプロットを書き上げたという。あの「マンマミーア」の脚本も断ったという。‥‥こういう絶妙な「ウソ」を混ぜ合わせて「冒頭」が始まる。上手い!小説は実在の人間が何人も出てくるが(あの、スピルバーグに台詞さえ与えている!)、やはりどう考えても、これはフィクションなのである。こういう構造自体が既に「エンタメの真髄」なのではないかね?(←誰に向かって喋ってるんだ?)
欧米翻訳ミステリを読むのは「アレックス」以来だから6年ぶり。翻訳探偵小説に至っては高校生以来◯十年ぶりという、海外ミステリ音痴が私である。「私はずっと、自分とは何か、日本人とは何かを知りたくて本を読んできた。日本人のこともわからないのに、どうして海外のそれも翻訳モノを読む余裕があるんだ?」というのが、私が海外ミステリを忌避してきた理由である(←ホントか?いや、ホントである)。ところがautumn522akiさんが鬼★5という激推しをしていて、つい「それなら、読んでやろーじゃねーか」と宣言してしまった(←誰に?)ので紐解いた。
フツーにおもしれーじゃねーか。ちゃんと犯人探しの材料は出ているんだよな。むつかしーな。それでも、中盤で俺は犯人の目星をつけたんだぜ。そしたら、ホロヴィッツ先生も「誰が犯人か、わたしはわかったよ」(320p)と宣(のたま)った。話を聞くと、俺と全く同じ推理じゃねーか。ガッカリしたよ。推理小説のセオリーでは、中盤で相棒が目星をつけたら、それは間違いだということが確定したということだよな(←何故か、ここだけタメ口)。
良かった、〆切が迫っていなくて‥‥。そこからは結局ノンストップで読了した。犯人‥‥ま、まぁそうだよね。なかなかやるじゃん、ホーソーン。
グローバル世界の昨今、海外ものだからといって、他国の人間の憎悪、社会の機微が理解不能になるわけじゃない。むしろ、良質な翻訳ものは増えていると理解した。しかも、なんとなく懐かしい探偵小説に巡り合わせてもらった。こういう探偵小説なら、また読んでもいいかもね。
- 感想投稿日 : 2022年6月14日
- 読了日 : 2022年6月14日
- 本棚登録日 : 2022年6月14日
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