メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2019年9月28日発売)
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作家アンソニー・ホロヴィッツが本人として登場し、ワトソンとなり、元刑事ホーソーンがホームズとして殺人事件を解決する作品である。今回初めて知ったが、ホロヴィッツは現実でもホントに有名脚本家らしい。いま正にスピルバーグの「タンタンの冒険2」のプロットを書き上げたという。あの「マンマミーア」の脚本も断ったという。‥‥こういう絶妙な「ウソ」を混ぜ合わせて「冒頭」が始まる。上手い!小説は実在の人間が何人も出てくるが(あの、スピルバーグに台詞さえ与えている!)、やはりどう考えても、これはフィクションなのである。こういう構造自体が既に「エンタメの真髄」なのではないかね?(←誰に向かって喋ってるんだ?)

欧米翻訳ミステリを読むのは「アレックス」以来だから6年ぶり。翻訳探偵小説に至っては高校生以来◯十年ぶりという、海外ミステリ音痴が私である。「私はずっと、自分とは何か、日本人とは何かを知りたくて本を読んできた。日本人のこともわからないのに、どうして海外のそれも翻訳モノを読む余裕があるんだ?」というのが、私が海外ミステリを忌避してきた理由である(←ホントか?いや、ホントである)。ところがautumn522akiさんが鬼★5という激推しをしていて、つい「それなら、読んでやろーじゃねーか」と宣言してしまった(←誰に?)ので紐解いた。

フツーにおもしれーじゃねーか。ちゃんと犯人探しの材料は出ているんだよな。むつかしーな。それでも、中盤で俺は犯人の目星をつけたんだぜ。そしたら、ホロヴィッツ先生も「誰が犯人か、わたしはわかったよ」(320p)と宣(のたま)った。話を聞くと、俺と全く同じ推理じゃねーか。ガッカリしたよ。推理小説のセオリーでは、中盤で相棒が目星をつけたら、それは間違いだということが確定したということだよな(←何故か、ここだけタメ口)。

良かった、〆切が迫っていなくて‥‥。そこからは結局ノンストップで読了した。犯人‥‥ま、まぁそうだよね。なかなかやるじゃん、ホーソーン。

グローバル世界の昨今、海外ものだからといって、他国の人間の憎悪、社会の機微が理解不能になるわけじゃない。むしろ、良質な翻訳ものは増えていると理解した。しかも、なんとなく懐かしい探偵小説に巡り合わせてもらった。こういう探偵小説なら、また読んでもいいかもね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ま行 フィクション
感想投稿日 : 2022年6月14日
読了日 : 2022年6月14日
本棚登録日 : 2022年6月14日

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コメント 2件

ひまわりめろんさんのコメント
2022/06/14

kuma0504さん
おはようございます

そうなんですよ!
autumn522akiさんのレビューには心を動かせるだけでなく実際に行動させる熱さがありますよね
どうしてか説明はてをきませんけど(できんのかーい!)
自分もすごく参考にさせて頂いてる方の1人です

これを機にkumaさんも海外ミステリの世界においで頂ければと思います
外を知ることで内なるものにより光があたるということもあるんじゃないでしょうか?
って海外ミステリファンを増やしたいだけの詭弁ですけどw

kuma0504さんのコメント
2022/06/14

ひまわりめろんさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

4月4週のブックリストで紹介したとき「ここまで煽られたら、読まなくちゃ」と「つい」書いてしまったので、禁断の欧米翻訳探偵小説を紐解いてしまいました。

「外を知ることで内なるものにより光が当たる」
そうなんですよね。わかってはいるんです。
でも内なるものの目星もつかない段階では、エラリーとかホロヴィッツとかドイルとか、手を出すのが怖いのが正直なところ。その作家の8割ぐらい読まないとファンを公言しないというマイルールもあります。
人生は短く、読みたい本はあまりにも多い。

でもあんまり頑なになると嫌われるので(←誰に?)、また読むかも。

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