カンブリア紀の怪物たち (講談社現代新書)

  • 講談社 (1997年3月20日発売)
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感想 : 27
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地球史というものがある。人類史でもなく、歴史でもない。
私が気づくのが遅かったのかあるいは、私以外の人々はすでに知っていたことなのかあるいは、考えたこともなかったのかはわからないが、4000年の歴史などと言っていることや人種なんていっていることがどれだけ小さなスパンで物事を考えているかがよくわかる。そういう意味では、生物学的進化論というのもまた膨大な時の積み重ねのなかから感じるものであるということになるだろう。
たかだか数百万年の時を過ごし、数千年の有史を誇り、人種や文化の違いを論じ、爆発的な発展や進歩を自慢する人類と、この本の主題である原生代終盤のカンブリア期の爆発的な生物の多様化のさまを見比べてみると、人間の想像力を越えた生物たちが見えてくる。
当時の捕食獣の王アノマロカロスの姿はもはや現存する全ての生物とは違う生物の原始的な野獣性を表現している。
ハルキゲニアはどちらが上か下かが不明で、現代の人類の想像力を欺く。それは、現存するサカサナマズのように腹部を上にして泳いでいるというような生物の定型を守っているものではなく、形態がどちらが上か下かが判断できないというものである。
6億年前におきた生物多様性の大爆発のきっかけはなんであったのか。
それはなんと、「眼(光センサー)の誕生」なのだった。
まるでおとぎ話のような話ではないか。
光を感知する能力を得た生物が自分の可能性を見出し、多様化する。
世界の美しさに感動した気分になれる好著である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2011年8月19日
読了日 : 2011年8月19日
本棚登録日 : 2011年7月3日

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