オブリヴィオン (光文社文庫 と 22-3)

著者 :
  • 光文社 (2020年3月12日発売)
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本棚登録 : 355
感想 : 37
3


初・遠田潤子さん。
ざっくり、生まれ育った悪環境から抜け出すのは容易ではないという重いお話。

森二一家は父親のギャンブル狂いで家庭崩壊。
兄の光一とノミ屋を生業としていた森二は、ある事件で将来の義兄となる圭一と出会う。
圭一は良家の育ちの大学院生で温厚な人物。
森二に人生をやり直す機会を与えてくれた。
共に応援してくれた妹の唯と結婚し娘にも恵まれた。
なのに、なぜ唯を殺したのか。
それはそれは複雑に絡まり合った不運のドミノ倒し。絡まってるから綺麗には倒れないのがポイント。

予想つくところと私には不発なところがあったので
強引に複雑にしているようにも感じましたが。

足を引っ張る。と言うのは上を目指してる者同士のイメージだったのですが、ここでは一人だけ悪環境から出ようなんて許しまへんで(大阪舞台なので関西弁で)という下へ引き込む話で使われていて、頑張っても無駄という無力感が絶望しか生まず、悪環境から抜け出すのは相当難しいものだとズンと胸が重くなりました。
最後の方に明らかになる森二の過去。親から受ける体罰とその理由があまりにも身勝手で酷く、それを知ってから見る表紙の絵は悲しいです。

隣に住む少女は指名手配の父親の帰りを待って、アルゼンチンに住む母親に会いにいく希望を持って真面目に一生懸命生きています。その真っ直ぐさ、胸が痛いです( ᵕ ᵕ̩̩ ) ズル賢いヤツらがいい目を見るのはやりきれない。
重い話ではありましたが光は見えたと思います。

⚫︎オブリヴィオン
忘却・人事不省
恩赦・大赦


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年5月25日
読了日 : 2020年5月22日
本棚登録日 : 2020年5月23日

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