武士道シックスティーン (文春文庫 ほ 15-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年2月10日発売)
4.10
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本棚登録 : 7122
感想 : 830
5

題名を見た時から面白そうな本だなと思っていた。
案の定、本当に面白い青春スポーツ小説であった。
笑って、ハラハラしてしかもちょっと感動できる。
言う事なしですね。

主人公は二人の女子高生剣道部員。
この二人のライバルを軸にして話が展開する。
(ライバルと書いたがライバル視しているのは一人だけでもう一人はそんなこと思ってません)
二人の主人公の性格が好対照で面白い。
一人は、父兄共に剣道をやっている剣道ファミリーで育った筋金入りの剣道少女 磯山香織。
剣道に全てを賭け、幼いときから実戦的な激しい稽古を行う道場で鍛錬し、勝つことのみを追い求める。
心の師匠は、宮本武蔵で「五輪書」を愛読しているという戦闘的な兵法者である。

もう一人は、中学校に入るまでは日本舞踊をやっていたという異色の経歴を持つ少女 西荻早苗。
性格はおっとりしており、勝負に勝つよりも自分の技術が向上することなどに喜びを見出すタイプ。
現在家庭にちょっと問題を抱えており、名字が変わっている。
家族は様々な才覚を持った人ばかりである。
父は元町工場の社長の技術者、母は絵本作家、姉はティーンズファッション誌のモデル。

話はこの二人の主観で交互に語られる形式で進んでいく。
この構成が本当にうまくいっていると思う。
性格の全く異なる主人公たちの書き分けが非常に巧みなので、章が変わるごとの雰囲気の変化が面白い。
同じシーンでも二人の感じ方の落差があって笑ってしまうこともある。

様々な思い違いやそれぞれの葛藤などを乗り越え、彼女達は人として成長していき、最後は青春スポーツ物の王道の様なエンディングとなる。
ホント素晴らしいエンターテイメント小説をありがとうと言いたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 青春
感想投稿日 : 2017年12月28日
読了日 : 2017年12月25日
本棚登録日 : 2017年12月24日

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