すごく女性性について考えさせられる作品だった。
フェルメールの作品の中で特に有名な「真珠の耳飾りの少女」に描かれている少女のお話。絵画を元に、その絵が作られた背景を書く小説というのは珍しい。もちろんフィクション。
主人公のフリートは父が失明して働けなくなったため、フェルメールの家に奉公にいくことになる、というのが簡単なあらすじ。
フリートはとても「目がいい」。作中で何度も目が大きいとも言われる。色に対する感覚も優れいている。そのせいかはわからないが、フェルメールに気に入られるようになる。そして、新人女中が旦那に気に入られると、奥様や先輩女中から反感を買うのは当然の流れ。
そして、仕事で買い物へ行く肉屋の息子もフリートに心を寄せている。両親からは身分が釣りあって、なおかつ肉という贅沢品を手に入れることができる息子との結婚するようにしむけられる。
フリートは17歳で、ちょうど自分の女性性を意識し始める年頃。道行くおじさんに好奇の目で見られたり、門番の兵士から情報を聞き出そうとすると体を要求される。
さらに、フェルメールのお得意様からも目をつけられてしまう。そのお得意様は隙あらばフリートにちょっかいをだそうとする。そして、フェルメールにフリートの絵を描くように要求する。お得意様からの頼みを断ることも出来ず、フェルメールはフリートの絵を書き始める。
フェルメールにモデルになれと言われれば、女中のフリートはモデルになるしかない。奥様を一度も絵に描いたことがないフェルメールが、フリートを描くとどんなことになるか分かっているのに。
さらに、肉屋の息子との関係も順調にすすんでいるのに、その絵のことが世間に知れたら大変なことになる。色々な人間の仲でフリートは板挟みになっていく。
フリートは父のせいで奉公にだされ、フェルメールに気に入られたため他の人からの風当たりは強くなり、家のために肉屋の息子とくっつくようにしむけられる。女だから、自分で物事を決めることも文句をいう事もできずに流される。そして誰もフリートのことを考えてはくれやしない。
また、フェルメールはフリートを気に入っていて肉屋の息子やお得意様に嫉妬をするが、だからといってフリートの味方にはなってくれない。
そんな周囲に耐えながらひっそりとフェルメールを思い続けるフリートの姿がいじらしい。
フリートは髪を見せることが自分の女性性を解放することだと考えている。まわりから不埒な娘、と疑われながらも絶対にフェルメールと一線を越えようともしない。しかし、フェルメールに髪を見られてしまったあとは、肉屋の息子を一線を越える。彼女の中で守るべきものが失われたのだ。
- 感想投稿日 : 2011年12月9日
- 読了日 : 2011年12月9日
- 本棚登録日 : 2011年12月9日
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