息子と狩猟に

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  • 新潮社 (2017年6月30日発売)
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感想 : 18
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「ケモノは人間が思うほどバカじゃない。人間は自分で思っているほど利口じゃない。ケモノを追いかけていると、人間とケモノの違いがわからなくなる。わがまま勝手な人間がバカに思えてくる。」「バカな人間でも撃ち殺したら警察に捕まる。賢くてもケモノならいい。なんでだ?」(P59)
善悪という概念はケモノにはないだろうけど、邪なケモノというものは存在しない。ただそれぞれの自然の欲求に従っているだけ。邪な生き物は人間以外にはなく、明らかに害をなす人間の命を奪うのは罪で、純粋に生きているだけのケモノの命を奪うのは問題ないというのは、どういうことだ、という思いはきっと多くの人が抱いている。もちろん社会を維持するためにはルールが必要で、人間が生きるためにはケモノの肉が必要だ。ケモノの命も人間の命も等しく尊いということにはできない。そんなことはわかっている。それでも湧いてくる思いを小説にしたという印象。また、狩りをして、他の生き物の肉を食べるという根元的な興奮と悦びは、人間にもケモノにも備わった自然なのだということ。
小説としてはまだ未熟な部分もあるように感じたが、実際にサバイバル登山をしている著者だからこそ書ける小説だと思う。
「K2」も極限の状態で生きることはどういうことなのかを、「食べる」という視点で描いている。
「植村直己は、人肉なんか食ってない」「そうだ。でもこの状況なら、食う。」(P164)
遠藤周作の『沈黙』のイエスも転んだ、みたいだな、と。こちらは「ぐるぐるまわる」ことも描きたかったわけだけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年10月6日
読了日 : 2018年10月6日
本棚登録日 : 2018年10月6日

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