堕落論 (280円文庫)

3.76
  • (39)
  • (50)
  • (47)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 752
レビュー : 56
著者 :
kurodamaさん エッセイ   読み終わった 

「人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に、人間を救う便利な道はない。」堕ちよ、生きよと説いた坂口安吾の堕落論は、戦後の日本が持つ様々なトラウマを浄化し、伝統や精神論的絶対服従の鎖を断ち切った。続堕落論でも、農村文化を崇高に従う生き方を否定し、貧乏であること、節約することを美徳とする日本の武士道や戦争に突入するときにもっていた天皇絶対の思考を、完全に取っ払おうとしている。みんなそうあるべきだと、根底に流れるのは安心感であり、その安住の地から堕ちる恐怖は、人間が誰しももつもので、日本人だからとか戦後だからとかではない。安心して、勇気を持って堕ちることで、そこから戦後の日本人の重たい鎖を外そうとした。確かに、付き従うこと、盲目的に信じることの方が楽なのかもしれない。こういうものだよね、そういうセリフをいつのまにか吐いていることもあるかもしれない。でも、本当にやりたいこと、もっと俗で、もっと生々しいことの方にリアリティがあって、それやってみたらいいよと言えることの方が健全であるのかもしれない。堕ちるという単語を用いるセンス、戦後日本の精神を支えたエッセイと言える強さ、言葉が持つ力を十二分に感じられる作品だ。

レビュー投稿日
2016年8月29日
読了日
2016年8月29日
本棚登録日
2016年8月29日
1
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『堕落論 (280円文庫)』のレビューをもっとみる

『堕落論 (280円文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする