魂込め

著者 :
  • 朝日新聞出版 (1999年7月1日発売)
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本棚登録 : 59
感想 : 7
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同作者の、芥川賞受賞作の「水滴」をはじめとした3篇よりも好みの作品が多かった本書。今回も短編集で、6つの物語がある。表題作の「魂込め」を始め、「ブラジルおじいの酒」「赤い椰子の葉」「軍鶏」「面影と連れて」「内海」いずれも哀愁が漂う。シャーマンや平凡な日常(傍から見たらそれも特別な光景)から、戦時の頃や日本返還に伴い起こった変化なんかの沖縄の息吹きが全体にかかっている。マジック・リアリズムを思わせるスピリチュアルな場面さえ、独立した文化の影響と思ってしまう。「ブラジルおじいの酒」返還に際しての変化、おじいとの関わりを描く。「赤い椰子の葉」もクラスメイトとの関わりを描くが、沖縄という土地の形式やアメリカ軍基地という存在が目立つ。「軍鶏」鳥を戦わせるという一風変わった光景、闘牛ではなく闘鳥。「面影と連れて」実験的な作品。これもまた人生か、穏やかな人が多い土地とは言うけれど。「内海」内の人、外の人との隔たり、距離感の問題。どれも明るくはない。
「ブラジルおじいの酒」なんかは、宮本輝の作品を彷彿とさせた。全体的に優れた作品がよくまとまっていたと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年1月18日
読了日 : 2016年1月17日
本棚登録日 : 2015年12月25日

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