車輪の下 (集英社文庫)

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本棚登録 : 803
レビュー : 84
制作 : 井上 正蔵 
kurodamanabuさん 小説   読み終わった 

この小説は愉快でも無ければ感動するものでもないだろう。
周囲や近所の大人たちによって神童と呼ばれた彼の感じやすい精神が無責任な期待の積み重ねに屈し、青春の姿の断片を人生の全てと思えてしまう景色にのめり込み、社会に潰されてしまう物語。

本来の読み方であれば、突き詰める問題やテーマは「教育制度のあり方」や「拘束からの開放、または脱走」だと思う。しかし、自分の場合は、神学校に入学してからの主人公ハンスと真逆の性格をしている少年ハイルナーとの出会いとふれあいによって育まれた友情とも愛情とも形容出来ない関係について焦点を当ててもいいと思った。
ハンスが持った学校内の環境に対しての意識、自分が勉強すべき理由、などに対する疑問は、どちらも少年ハイルナーと関わるようになってからだ。これはある意味、考えること、生きることに気付かされた、悟らされたと言ってもいいのではないだろうか? 過去にハンスはよく釣りをしていたり、悪童とつるんだりして過ごしていた。この頃のハンスは人間らしく感じられた。しかし本書の序章のハンスはまるで自意識が無いように思えた。それは常に勉強・試験と彼の意識はそれだけであったからだ。実際試験が終われば趣味の釣りをするワケだけれど、しかし間もなくして勉強に再び取り組む。確かに「教育制度のあり方」について疑問を持ってしまうのもわかる。話しを戻して、ハイルナーと関わった後のハンスは、みるみると行動が変わっていく。学校を出て、実家に帰り、恋をして、働き、友人と飲み歩く。これらは根本からではないにしろ、ハンスの意思で選び取った行動だ。そして最後の結果も…。
だからこそ、この物語は大半の人にとっては悲しい物語に見える―ー実際そうだと思う。それでも自分は(高校を出て働いてる身だからかもしれないが)、ハンス自身が選んだ結果をそのままに実行しているのだから、たとえそれが逃避だったとしても、本人にとっては幸せだったのではないだろうか、と思わずにはいられない。

レビュー投稿日
2014年9月20日
読了日
2014年9月20日
本棚登録日
2014年9月20日
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