スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)

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本棚登録 : 1807
レビュー : 195
制作 : 和田 誠  伊藤典夫 
マヤさん 海外文学   読み終わった 

SFというジャンルに弱い人間なのだが、読み終わった後の率直な感想…「SFだけど、SFじゃなかった!」
ドレスデン爆撃という出来事があったことを初めて知った。現在はきれいな街だけど、白黒の焼け野原の写真を見て愕然とした。味方に空爆されるって、どんな気持ちだろう。体験した者にとってはやはり「そういうもの」なのだろうか。変えることのできない、ただそこにある現実。
生死を含めた人生の一瞬一瞬を客観視するなんて地球人には不可能だけど、だからといってトラルファマドール星人やビリーのようになりたいとは思わない。ただ、絶望的な一瞬やそれにまつわる考えだけに支配されるのではなく、生きていることの喜び、ハッピーな瞬間がそこに「ある」ことはいつも頭に置いておきたい。
ところどころに顔を出す筆者の痛烈な皮肉がパンチが効いていてよかった。
「貧者への義務を公的にも私的にもほとんど果たすことなくすましてきたという意味では、彼らはナポレオン時代以降もっとも恵まれた支配階級といえるであろう。」(p156)
「いずれにせよ戦争とは、人びとから人間としての性格を奪うことなのだ。」(p194)

レビュー投稿日
2017年9月28日
読了日
2017年9月28日
本棚登録日
2017年9月27日
3
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『スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)』のレビューへのコメント

アテナイエさん (2017年9月29日)

こんばんは♪ ひさしぶりにお邪魔します。

この作品、ほんとにSFなのにSFではないSF仕立ての感動作で、私の好きな作品の一つです。マヤさんの言われる、第二次大戦末期の米国のドレスデン無差別爆撃は衝撃ですね。体験者ヴォネガットの作品群やエッセイによれば、たしか2~30万人の一般市民があっという間に殺害され、美しい街並みもほぼ壊滅したようです。まるで長崎・広島のように悲惨です。ヴォネガット自身、心的外傷になっていてもまったくおかしくないなかで、そんな不安定な状況を逆手にとったような(?)本作品。時空を錯綜させたSF仕立てで面白く読ませます。こんな発想や創造は他の誰にもできないのではないでしょうか。決して易しい本ではありませんが、シニカルな笑いと気骨ある作品に仕上げたヴォネガットに感激しました(^^♪

マヤさん (2017年9月29日)

アテナイエさん、コメントありがとうございます♪
オススメしていただいたヴォネガット、ようやく読むことができました。表紙にUFO描いてあるのでコテコテのSFかと思っていたんですが、なんと立派な戦争文学ではないですか!体験した人にしか書けない、稀な作品ですね。やはり戦争を経験したヘミングウェイの作品「キリマンジャロの雪」を思い出しました。彼も戦争中の記憶を作品として残そうとするのだけど、書きたいと思いながら書くことができない。とても正面から向き合って書き記すことのできる記憶ではないのだろうと思いました。ですからこういった文学はもちろん、戦争体験の語り手さんたちの記憶は本当に無駄にしてはいけないなと…。SFが苦手な人にも読んでほしいし、また戦争文学が苦手な人にも読んでほしい作品ですね。
ちなみにこの本図書館で借りたのですが、普通の開架棚ではなく書庫にしまいこまれてまして…しかも区内の蔵書が超古い版の一冊だけ。なんでよ!もっと読まれるべき作品なのに!と思いました(ー ー;)

アテナイエさん (2017年9月29日)

え~この本が閉架ですか? しかも古い版が1冊……あらら、それはちと悲しすぎますね。ぜひ図書館の館内にあるアンケートや利用者の声の紙にガンガン書いて投函しましょう!
 私は自分が借りたい本が結構ない確率が高くて(汗)、他から取り寄せになる場合が多いので(それはそれでありがたいのですが)、いい本なので買い入れのお願いをしたり、その他にも新版を要望したり、開架要望など、いろいろ書いてます。マヤさんの貴重な声をあげられてくださいね~笑

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