死の家の記録 (光文社古典新訳文庫 Aト 1-15)

  • 光文社 (2013年2月13日発売)
3.88
  • (8)
  • (9)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 207
感想 : 14
2

シベリアと聞くとなんとなく白と灰色の世界を思い浮かべる。静かで寒くて薄暗い(もしくは薄明るい)世界を。『イワン・デニーソヴィチの一日』を読んだ時もそんな印象だった。
同じシベリアの監獄が舞台だけど、こちらには「色」がある。酔っぱらった囚人の「赤」い顔、春に芽吹く森や草原の「緑」、囚人たちにかわいがられる「栗」毛の馬、などなど。囚人にもいろいろな性格のものがいて、ちょっとした世界の縮図のよう。喧嘩の怒鳴り声やバラライカの音も聞こえてきて決して「静か」ではない。監獄という特殊な環境だからこそ浮き立つ人間味が描かれているなぁ、と感じた。
驚きだったのが、ロシアの民衆が「たとえ囚人の犯した罪がどれほど恐ろしいものであれ、決してその罪のことで囚人を責めようとはせず、囚人が負わされた罰に免じて、そしてそもそもの不幸に免じて、すべてを許そうとする」ということ。今の日本では犯罪を犯した人間が相応の罰を受けるのは自業自得で当たり前、というとらえ方が一般的なように思うし、本人に反省の様子が見られないとすごく冷たい目で見られる気がする。でも犯した罪を責めることよりも、その罪を犯してしまった不幸の原因に目を向ける方が大事だよな、と思う。だからロシアの素朴な民衆の視点には見習うべきところがあると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2017年2月16日
読了日 : 2017年2月14日
本棚登録日 : 2017年2月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする