からくりサーカス (16) (小学館文庫 ふD 38)

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本棚登録 : 24
レビュー : 4
著者 :
『黒犬』の優樹(2)さん 少年漫画(小学館)   読み終わった 

ほんと、ストーリーが激しく、魂の奥底から揺さぶられます
勝サイド、しろがね+鳴海サイド、どちらでも、お互いに負けない変化がストーリーに起きているってのが、これまた、グッと来ます
これも一種の相乗効果でしょうか

では、まず、勝サイドから
雪降る中で催される人形相撲
多少のトラブルに見舞われながらも、研鑽した実力を如何なく発揮し、ついに、勝は決勝戦に進みます
まさか、ギィが勝の成長具合を確認するために、相手選手に手を貸すとは思いませんでしたけどね
やり方は、ちょっと大人げないにしろ、これも彼なりの教え方なんですかね
もしかすると、鳴海の影響を受け、ちょっとだけ、甘ちゃんになっている可能性もあるかな
勝が、ここまで、お酒でへべれけになるってのも驚きましたね
ただ、『うしおととら』の潮も、こんな感じでしたから、藤田先生なりのこだわりなんですかね
しかし、勝は決勝戦には出れなくなりました
それは何故か、最悪のタイミングで、フェイスレスが刺客を送ってきたからです
性格がひん曲がりすぎている奴だから、わざとじゃないか、と疑っちゃうほどのタイミングです
勝だって、決勝戦に出たかったでしょう
けど、勝は、しろがねを守る戦いに向かう方を選びました
平馬との約束を蔑ろにするつもりは、彼にありません
どちらも守りたいけど守れないからこそ、自分にしか出来ない戦いに自分が出向き、仲間に託せる戦いは頼む、その決断が出来る勝は、本当にすごい、と思います
しろがねを守る、正二との約束もあるんでしょうが、勝は努力している平馬なら勝てる、と信じていたんでしょうね、きっと
五郎との決勝戦が始まり、最初こそ、意地を張りすぎて、窮地に陥ってしまった平馬でしたが、自分にとって何が大切か、を思い出し、その大切な人を守るために、自分はどうすべきか、に気付けた平馬は、元からあった才能が開花します
負けん気の強さに加え、勝から知らず知らずのうちに教わっていた、どんな苦境に追い込まれようと諦めず、足掻き、立ち向かう強さは、平馬を前に進ませます

勝も、平馬に負けないほどの激闘を、第一の刺客・トルネードラプソディー相手に繰り広げていました
今更、私がエラそうに言う事でもありませんが、藤田先生の人形のデザインは、本当にセンスがギラついてますよね
基本的に、あまり、フィギュアなどの立体物には興味がないんですけど、『からくりサーカス』に登場する懸糸傀儡や自動人形のフィギュアなら欲しい、と思えます
第一の刺客に選ばれるだけあって、トルネードラプソディーの強さは本物でした
コンクリート片を勢いよく飛ばしてくる「クラッシュンド」は、実に強烈
勝は、それを、バブルザスカーレットの特性を上手く使い、カウンターし、トルネードラプソディ―へ大ダメージを与えました
しかし、そこで勝てるほど、甘くないのが、藤田作品の常
まさか、こんな形態を隠し持っているとは
再び、追い込まれてしまう勝でしたが、ここでカッコつけて諦めないのも、藤田作品の主人公なんですよね
大切な人を守りたいから、自分が傷つく作戦を実行できるんでしょう
頭のネジが飛んでいるんじゃなく、痛みや怖さを受け入れ、乗り越えた上で、こんな無茶をやるから、カッコいんですよねェ
全部を出し切って勝利し、姉を守れた勝と平馬だからこそ、少年同士の友情が深まったんでしょう
こんな弟が欲しい、と思った女性の読み手も、きっと、いますね、えぇ
きっと、私だけかも知れないんですけど、この勝サイドで、個人的に最もグッと来たのは、勝がトルネードラプソディーに、平馬が五郎に勝利するシーンが並べられているページでした
どこ目線だ、と言われそうですけど、上手いなぁ、と感じました
あと、「本編~黒賀村へようこそ 第14幕 ふたつの戦いの始まり」、この扉絵にもまた、藤田イズムを感じました

しろがねもまた、鳴海との関係に大きな変化を迎えています
尋常じゃない憎悪と嚇怒の念を、鳴海から向けられ、戸惑いながらも、しろがねは彼と良好な関係を再び、築こうと努力します
その健気な頑張りは、鳴海に通じず、彼のしろがねに対する敵意剥き出しの態度は、仲間との関係も最悪にしていきます
そんな折に起きた、バスジャック騒動
『うしおととら』を読んでいる人間なら、きっと、こう思ったでしょうね、「キタ、コレ」と
戦いで、多くの仲間を失い、守れず、その上、自分が本物のフランシーヌ人形を破壊できなかった負い目を隠す鳴海は、復讐者と変じました
けど、彼は結局のとこ、冷酷かつ冷血な鬼にはなれないんですよ
例え、大切な記憶が抜け落ち、憎しみに突き動かされようとも、一たび、子供の悲鳴を聞けば、瞳に熱い炎が戻るんです
そんな彼だからこそ、しろがねは惚れているんです
アレですかね、母と娘ってのは、男の好みも似るんでしょうか。しろがねの場合、人間・フランシーヌの記憶も受け継いでいるから、誰かの為に戦える男に魅かれるのかも知れませんが
普通の人間じゃ太刀打ちできない自動人形相手に、命懸けの戦いを繰り広げてきた鳴海にとっちゃ、散弾銃を持っていようが、凶悪犯くらい、簡単に倒せちゃいますね
同情の余地は微塵もないんですが、鳴海に瞬殺された男どもには、「相手が悪かったな」くらいは言いたくなります
犯人どもをぶちのめした鳴海でしたが、時限爆弾の起動を許してしまいます
勝に、本当の強さと男気を教えただけあって、鳴海は子供らを守るべく、爆弾が設置されたバスを走らせ、この場から遠ざかろうとします
けど、誰かを守りたい鳴海を死なせたくないのが、しろがねです
自分は「しろがね」だから死なないって自信もあったんでしょうが、無茶をしますね、ほんと
ここもまた、お母さん譲りなんでしょうかね
そんなしろがねを爆発から、身を挺して守る鳴海
ゾナハ病の治し方を話す前に“壊れる”のは許さないってのもあるんでしょうが、覚えていない、自覚していないだけで、愛がある、と思いたいもんです、私としちゃ
鳴海から、彼に何が起き、何が彼を変えてしまったか、自分に向けられる怨みの根源を、しろがねは聞かされ、今までに感じた事のない無力感と絶望感に苛まれます
そんな彼女を支え、鳴海の為に生きよう、と決めさせるのは、やっぱり、純粋な彼への愛情です
しかし、それにしても、フゥは、フェイスレスとは違った意味合いで、場を乱してくれますね
情報と理解不足ってのがあるにしても、この勘違いは、ちょっとなぁ、と思っちゃいます
けど、フゥの思い違いがあってこそ、ストーリーが面白い方向に加速しているんですから、やはり、上手いなぁ、と思うのです
しろがねだけじゃなく、少しずつ、仲町サーカスのメンバーとも関係が良い方に変化していきそうなので、これからが楽しみです

この台詞を引用に選んだのは、平馬の強さと同時に、勝との友情を、読み手に強く感じさせてくれるものだからです
月並みな言い方ですが、人は独りじゃ強くなれません
男には、一人で戦わなきゃいけない時と場がありますが、その時、踏ん張らせる「何か」には、友情がある、と私は思います
友情を育むことで生まれるモノが、困難に立ち向かう勇気や、逃げたい衝動に抗う根性、そして、勝利への執念を振り絞らせるんです
二人が難敵に勝てたのは、姉への思いだけじゃなく、友情パワーもあったからですよね、藤田先生
(そうだ・・・アイツだ・・・・・・
アイツがオレに、声をかけた時からだ・・・・・・
『人形相撲に勝とう!』
『ぼくも手伝わせてよ!』
アイツの声がいつの間にか・・・
『あのヒトのタコ、ぼくらのより小さかったよ』
オレの背中を押してやがった・・・・・・・・・・・・
『平馬、こんな時・・・おとなしくかっこつけた、あきらめガオはやめようよ』)
「オラ、平馬! 人形ごと、ぶっ飛ばんかい!」
(なんだ、こいつ!?
こんな奴に負けるかよ!!
だから、だから、マサル・・・てめぇも負けるんじゃねぇ!!)(by阿紫花平馬、才賀勝、衝月五郎)

レビュー投稿日
2020年5月15日
読了日
2020年5月15日
本棚登録日
2020年4月27日
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