前作『消失グラデーション』に関しての深刻なネタバレはありませんが、刊行順に読んだ方があらゆるポイントでニヤニヤできるはず。
動画サイトで高い評価を獲得し世界的にも注目されつつある女子高生の音楽ユニット。そのミュージッククリップを制作している葦原女学院高校映研。今回クリップの制作過程をドキュメンタリーとしてカメラに収める、同学院の卒業生であり映像作家の真壁梓(まかべあずさ)。そして学院外の人間を含むオーディションによって集められたスタッフたち。
バスケ部の次は映研が舞台。
映像技法や機材、舞台装置からスタッフの動きまで前作同様に臨場感が凄いです。そしてミュージッククリップの撮影を、さらに演出を加えたセミ・ドキュメントとして撮影する過程で起こる事件という多重構造。リアルと虚構の境界が曖昧で幻惑され油断できません。
また、密室に始まりミステリでは定番となったあらゆるギミック、トリック、シチュエーションが、料理の仕方によってこうも新鮮に甦るのかという驚きと楽しさがあります。
特に、何故◯を◯◯したのかという謎に、過去に例を見ないと思われる新解釈を加えたのには感心しました。
ほんのり「貞子」テイストの不思議美少女や、土佐藩士ばりに男前なワーキングウーマンなど、今作も「いいキャラ」満載。
現代的な題材を扱いながらも、意外に横溝正史の『八つ墓村』などに通じる雰囲気もあり『消失グラデーション』のスマートな印象とは違って、混沌としたパワーと魅力に満ちた作品でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ(国内)
- 感想投稿日 : 2012年11月23日
- 読了日 : 2012年11月19日
- 本棚登録日 : 2012年11月19日
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