島はぼくらと

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本棚登録 : 3759
レビュー : 589
著者 :
制作 : 五十嵐 大介 
kwosaさん 小説(国内)   読み終わった 

「ああ、この人はお母さんなんだなぁ」

辻村深月さんが、新刊『島はぼくらと』のプロモーションのために出演した情報番組でのインタビューをテレビで観ていた。
お子さんを保育園に預けてその時間を執筆に当てているのだそうだ。
「子供がくれた時間で書かせてもらっているんです」
そう語る彼女の声をききながら早速パソコンを立ち上げ、図書館のホームページから『島はぼくらと』をネット予約した。

瀬戸内に浮かぶ「冴島」を舞台に、そこでの生活が池上朱里(いけがみあかり)、榧野衣花(かやのきぬか)、矢野新(やのあらた)、青柳源樹(あおやぎげんき)ら、島で四人だけの高校生の視点で語られる。

僕は熱心な辻村ファンというわけではないが、それでも『スロウハイツの神様』で心を掴まれ、『ぼくのメジャースプーン』『凍りのくじら』と読んで、この作家を追いかけていこうと思っていた。
なのに『名前探しの放課後』やそれ以降をぶっとばして、最新作に手を出してしまった。

明るい。
『島はぼくらと』は明るいのだ。
潮の匂いがして、太陽を感じて、健康的で生気に満ちあふれている。
もちろん、ミステリ出身の作家さんらしく物語は緻密な構成で、一見うまく回っているような島の生活に不穏分子がはいってきたり、登場人物たちも謎や秘密を抱えていたりと、「辻村節」は健在なのだが何かが違う。
レゴブロックで精巧に構築された箱庭にキャラクター達を正確に配置し、「よーいどん!」でピタゴラスイッチのように物語が収束していく従来のカタルシスも捨て難いが、この『島はぼくらと』は人々がもっとゆるやかに繋がり、活き活きのびのびと互いに影響しあって物語を奏でているのがいい。
サプライズや伏線の回収があったとしても、「そんなの関係ないぜ」と違う人生を生きる。そんなことだってありえるかもしれない。

「冴島」という架空の舞台には登場人物達が一人減ろうが増えようが、いくらでも物語が湧き上がってくるような生命力が宿っている。

いい人だとか嫌なヤツだとか、人はそんなに単純じゃない。
スーパーヒーローのように見えても、すべてが得意なわけでもない。
また、何も持ってないようでも、必ず突出した何かがある。
それぞれの人が、それぞれの役割で、それぞれに適した場所で、静かに連なっていければこれ以上に幸せなことはない。

辻村深月はこんなに素晴らしい作品を産み落とした。
彼女は母となり、新しいステージに突入したのだ。
僕は勝手にそう解釈している。

レビュー投稿日
2013年8月15日
読了日
2013年8月14日
本棚登録日
2013年8月14日
21
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『島はぼくらと』のレビューへのコメント

円軌道の外さん (2013年8月18日)


お久しぶりです!

いやぁ〜とにかく多忙で
仕事の休みがなかなかとれないんですが、

またまた例の病気が再発し、
ダウンしております(>_<)


病気にならんと
時間の余裕がないのもなんだかな〜って感じやけど(笑)


そちらはどうですか?
暑い日が連日続いてるけど
身体壊したりしてないですか?


そっかぁ〜
辻村さん、お母さんなんですね(^O^)

それにしても
『レゴブロックで精巧に構築された箱庭にキャラクター達を正確に配置し、「よーいどん!」でピタゴラスイッチのように物語が収束していく従来のカタルシス』って
まんまその通りですよね(笑)

上手いこと形容するなぁ〜って
ホンマ感心しましたよ(*^o^*)


辻村さんの本は
心理描写が緻密で
物語にどっぷり浸ってしまうので
読み終えると何も手につかなくなって
ある意味危険なので(笑)、

自分もまだ
初期のものしか
読めてない状況なんスよね〜(汗)(^_^;)


でもこの作品は
ホンマ読んでみたいなぁ〜♪

新しい辻村さんの魅力を感じてみたいです(^_^)v


kwosaさん (2013年8月19日)

gumi-gumiさん

こんにちは。
リフォローありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。

『スロウハイツの神様』いいですよね。
あれでどっぷりはまってしまいました。
辻村深月さんの作品を読むのが楽しみで、がんばって追いかけていますがなかなか追いつきません。
さて、次はどれを読もうか。
わくわくしながら悩んでいます。

kwosaさん (2013年8月19日)

円軌道の外さん

お久しぶりです!
復活(?)でよいのでしょうか。
こうやってコメント頂いたりレビューを拝読できるのは嬉しいのですが、お体の具合が心配です。
ご無理なさいませんように。

こちらはおかげさまで元気でやっています。

そうそう、辻村さんお母さんなんですよ。
この『島はぼくらと』は、なんだか母性というか、母の強さや優しさがにじみ出ていて、過去に読んだ辻村作品とくらべると、角が取れて生命力が内側から溢れてくるような豊かさを感じるんですよね。

先に最新作のこれを読んでしまったので、以前の胸を掻きむしられるような物語に戻れるのかが少し心配でもあります。

でも、ぜひぜひ円軌道の外さんにも読んでほしいなぁ、って思っています。

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