スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

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レビュー : 861
著者 :
kwosaさん ミステリ(国内)   読み終わった 

赤羽環のような女性は、苦手だ。
男性のことを「男」と呼び、「セックス」という言葉をあえて口にする。
仕事はばりばりこなす(それはいい)。自分の信念に裏打ちされた正しい言葉をストレートに放ち、周りを切り刻む。
一見さばさばしているようだが、こういう人が一番自分の女性的な部分を意識していて、関係がこじれると厄介なタイプなのだ。

狩野荘太も長野正義も苦手だ。
そりゃ僕も『ミツバチのささやき』も『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』も好きだが、自分たちが特別だと思っているその感じがつらい。
そして、森永すみれ。
じつは頑固で芯の部分で揺るがないのが彼女だと思う。最も手強い。

タイプは違えど過剰な自意識の塊のようなスロウハイツの住人たちに居心地の悪さを覚える。
しかしそれは、録音された自分の声を聴く時の違和感や、街なかのショーウィンドウに映った無防備な自分の姿に感じる恥ずかしさと同様のものだった。

映画やドラマを観ていて「こいつ嫌な奴だな」と思う時は、いい脚本に力のある役者さんの魅力がばっちりはまった時だ。
『スロウハイツ』という建物は辻村深月さん自身で、彼女の分身であるスタンスの異なるクリエイターたちが、いつも心の中でせめぎ合い、闘い、葛藤しながら作品が生み出されているんだろうなぁと、ふと思う。

スロウハイツの住人たちが次第に気になり始め、見守りたくなってきた。彼らはどうなっていくのか。全てのカードは出揃ったのだろうか。
辻村深月さんが華麗に裏切ってくれることを期待して下巻へ。

(余談だが、チヨダ・コーキは西尾維新を、狩野荘太は若き日の藤子・F・不二雄先生をイメージしながら読んだ。『ダークウェル』の幹永舞と夜真下陸男も『DEATH NOTE』の大場つぐみ・小畑健コンビを想像してしまった。
『スロウハイツ』も『トキワ荘』みたいだ、と思っていたら、そのまんま作品内で言及されていたので、僕は作者の手のひらで踊らされているのかもしれない。下巻が楽しみです。)

レビュー投稿日
2013年3月16日
読了日
2013年3月11日
本棚登録日
2013年3月11日
13
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