これは、ファンタジー。
これは、ミステリ。
これは、ひょっとしてSF?
いやいやこれは、奇妙な恋愛小説。
それとも......
乙一 × 朝井リョウのハイブリッドのような最強の牝馬。
デビュ−3戦目ながらダートを一気に駆け抜け、これから重賞レースを総なめにしていきそうな予感。
『私を知らないで』
いいえ、あなたをもっと知りたい。白河三兎さん(性別不明)。
転勤族の父について、家族で横浜市の外れに引っ越してきた僕。
転校を四回も繰り返して身につけた嗅覚で、クラスのボスキャラを嗅ぎ分け、空気をうまく読み、つつがなく生きる。
「キヨコ」には近づくな。
それが暗黙のルール。
しかし、遅れてきたもう一人の転校生、高野によって平穏は破られる。それどころか、まったく空気を読まない高野が一気にスターダムを駆け上がり、クラスのパワーバランスが徐々に崩れ始める。
僕、高野、「キヨコ」そして、ボスキャラ「ミータン」たちはどうなっていくのか。
ミステリとして考えた場合の一つの要点は、まあ何となく読めた。
でも、この物語はそういうことじゃない。
そのもっと後ろにある様々な伏線の乱気流を、箒に跨がった見習い魔女のようにかいくぐり、右へ左へ、時に急降下、再び急上昇を繰り返しながら進んでいく。
そして魔女と箒の後ろにぶら下がってついてきた少年は、いつしか逞しく成長し、誰もみたことのない地平に辿り着くのだ。
その地平を垣間みた僕は、じわじわと切なさがこみ上げてきた。
そして気づく。その先にある魔法を。
そして気づく。白河三兎こそが本当の魔法使いであると。
全くノーマークだったが、先日の新聞広告とブクログのお仲間のレビューにより手に取った。
また、いい作家さんを見つけてしまった。
- 感想投稿日 : 2013年2月18日
- 読了日 : 2013年2月17日
- 本棚登録日 : 2013年2月17日
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