私を知らないで (集英社文庫)

  • 集英社 (2012年10月19日発売)
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本棚登録 : 2577
感想 : 339
4

これは、ファンタジー。
これは、ミステリ。
これは、ひょっとしてSF?
いやいやこれは、奇妙な恋愛小説。
それとも......

乙一 × 朝井リョウのハイブリッドのような最強の牝馬。
デビュ−3戦目ながらダートを一気に駆け抜け、これから重賞レースを総なめにしていきそうな予感。
『私を知らないで』
いいえ、あなたをもっと知りたい。白河三兎さん(性別不明)。

転勤族の父について、家族で横浜市の外れに引っ越してきた僕。
転校を四回も繰り返して身につけた嗅覚で、クラスのボスキャラを嗅ぎ分け、空気をうまく読み、つつがなく生きる。
「キヨコ」には近づくな。
それが暗黙のルール。
しかし、遅れてきたもう一人の転校生、高野によって平穏は破られる。それどころか、まったく空気を読まない高野が一気にスターダムを駆け上がり、クラスのパワーバランスが徐々に崩れ始める。
僕、高野、「キヨコ」そして、ボスキャラ「ミータン」たちはどうなっていくのか。

ミステリとして考えた場合の一つの要点は、まあ何となく読めた。
でも、この物語はそういうことじゃない。
そのもっと後ろにある様々な伏線の乱気流を、箒に跨がった見習い魔女のようにかいくぐり、右へ左へ、時に急降下、再び急上昇を繰り返しながら進んでいく。
そして魔女と箒の後ろにぶら下がってついてきた少年は、いつしか逞しく成長し、誰もみたことのない地平に辿り着くのだ。
その地平を垣間みた僕は、じわじわと切なさがこみ上げてきた。
そして気づく。その先にある魔法を。
そして気づく。白河三兎こそが本当の魔法使いであると。

全くノーマークだったが、先日の新聞広告とブクログのお仲間のレビューにより手に取った。
また、いい作家さんを見つけてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ(国内)
感想投稿日 : 2013年2月18日
読了日 : 2013年2月17日
本棚登録日 : 2013年2月17日

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コメント 11件

円軌道の外さんのコメント
2013/02/18


こんばんは!
寒い日が続いてるけど
お変わりないですか?


あははは(笑)
あなたをもっと知りたいには笑ってしまったけど、
相変わらず
上手いレビューっスね〜(^O^)


確かにいろんな人がレビュー書いてたけど、
kwosaさんのを読ませてもらって
一気に心動いたなぁ〜(笑)



乙一×朝井リョウってのが気になるし、

あと、転校の多い「僕」の境遇が
自分とまったく同じなんで
なんか共感してしまったし、

ミステリーっぽくない設定から
どう物語が飛躍していくのか
スゴく読んでみたくなりました!


近々買ってみます(*^o^*)


楽しみやぁ〜♪


kwosaさんのコメント
2013/02/19

円軌道の外さん!

たくさんの花丸とコメントをありがとうございます。

『桐島、部活やめるってよ』しか読んだことないくせに、朝井リョウさんを引き合いに出してしまって...... 
読んだ感触が違っていたらごめんなさい。

読了直後は、なんだか面食らってしまってどうしていいかわからなかったんですけど、なんだかじわじわ来るんですよね。
一晩眠って次の日にまたじわじわ、じわじわ。

この白河三兎さん。
とにかく文章と物語構成がうまい。
ちょっとうますぎて「出来杉くん」みたいに、かえって影が薄くなってしまう恐れもあるのですが、今後けっして無視することができない作家になりそうです。

マリモさんのコメント
2013/02/19

kwasaさん

わくわくするようなレビューですね!キヨコと僕が、箒にまたがって乱気流をかいくぐる様子を想像して、何かもう一度読みたくなってきました♪(笑)
棕櫚の箒にはきっと魔法がかかっていたんでしょうね。


白河さん、ほんとに何者なんでしょう。
私もこの方の作品はこれが初めてで、性別も何も知らないままです。
こっそり追いかけてみたくなりますね。

kwosaさんのコメント
2013/02/19

マリモさん!

コメントありがとうございます。
マリモさんの本棚のコメントも読ませて頂きました。

>棕櫚の箒にはきっと魔法がかかっていたんでしょうね。

魔法、かかってますよね、絶対。
そしてアレには、さらに上をいく魔法、いやオーバーテクノロジーが......

白河三兎さんはメフィスト賞出身の作家のようで『私を知らないで』以前に、著作が二つあるようです。
他も読んでみたくなります。

メフィスト賞からは辻村美月さんや、テイストは違いますが舞城王太郎さんなど、ミステリの枠を越えて活躍している方々が出ていますよね。
白河三兎さんも、それに連なり大いに飛躍していく予感がします。
これからが楽しみですね。

マリモさんのコメント
2013/02/19

kwosaさん

あわわわわ お名前間違ってました>< 
失礼致しました、申し訳ないです。。

白河さんはメフィスト賞出身なんですねぇ。メフィスト賞は発掘上手ですね!(笑)
これからドシドシ活躍してもらいたいですね。
とりあえず前の二作を読んでみなければです。

neon_booksさんのコメント
2013/02/19

コメント頂きありがとうございます!
この作品はしてやられた!...というか
まさかの着地点なのに、無理なく、
しかもグイグイ読ませつつ、胸を打つ
展開... というミラクルですね!

息が長く多くの方に読まれるといいなーと
思います^^

こちらこそ、よろしくお願いいたします!

koshoujiさんのコメント
2013/02/19

こんにちは。
うむむむむ。興味をそそるレビューです。
白河三兎さんって、面白そうですね。
私も皆さんに乗っかって読んでみようと思います。

kwosaさんのコメント
2013/02/20

マリモさん

名前の件、お気遣いなく。
僕も気づきませんでした、アハハ。
kwosaなんて自分でも読み方がわかりません。

前二作、読んでみたいですね。そして新作も楽しみですね。

kwosaさんのコメント
2013/02/20

neon_booksさん

こちらこそコメントありがとうございます!

まさにミラクルでしたね。
この『私を知らないで』
じわじわ売れていきそうな予感がします。

本棚、時々おじゃましますね。

kwosaさんのコメント
2013/02/20

koshoujiさん

こんにちは。
まさか憧れのkoshoujiさんからコメントを頂けるとは!
いつもレビューを拝読しております。

『私を知らないで』
あまりリアリティを求めるとアレなので、おとぎ話だと思って期待値を上げ過ぎずにお読みになるのが吉です。
koshoujiさんは、どのような感想をお持ちになるのでしょうか。

これからもよろしくお願いします。

koshoujiさんのコメント
2013/02/23

“憧れ”とは恐れ多いお言葉で(笑)。
白河三兎さん、市の図書館で蔵書検索したら、他の作品はあるのにこの作品だけないです、無念。
>デビュ−3戦目ながらダートを一気に駆け抜け、これから重賞レースを総なめにしていきそうな予感。
そんな馬ならこの目で、しかと走りを見届けたいのに。
ダート馬なのか、クラシックに乗っていきそうなのかだけでも見極めたいですな。(笑)

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