ボトルネック (新潮文庫)

3.28
  • (397)
  • (1060)
  • (1418)
  • (563)
  • (142)
本棚登録 : 9008
レビュー : 1209
著者 :
kwosaさん ミステリ(国内)   読み終わった 

ずいぶん昔、テレビで観たコントは秀逸だった。
ウッチャンこと内村光良扮するサラリーマン風の男が、颯爽と登場して道端に落ちている空き缶を一つだけ拾って去っていく。ただそれだけ。
しかし空き缶が拾われずそのままの未来では、風が吹いたら桶屋が儲かる式に現象が連鎖して、最終的にはタンクローリーがガソリンスタンドに突っ込んで大惨事となる。
ウッチャンは実は世界を救うヒーローで、事件や事故の原因となる「芽」を日夜摘んでいたのだ。
しかし誰も彼がヒーローであることを、ましてや世界が彼の手で救われていることを知らない。

バタフライ・エフェクトなどという言葉を知る由もなかった僕は、笑うと同時に大きな衝撃を受けた。

日常の自分の些細な言動がどれほど世界に影響を及ぼしているのか。「世界」が大き過ぎるのなら、自身の人生とその周辺にどのような変化をもたらすのか。考えてみると、面白いと同時に恐ろしくもなる。

嵯峨野リョウ。
友人の弔いのために訪れた東尋坊で不意に平衡感覚を失う。
ところが気がつくとそこは金沢の街。
自分が「生まれなかった」世界で出会った「生まれてくるはずだった」姉。
「間違い探し」の過程で遭遇する事件の予兆。

パラレルワールドものでありながら浮ついた感じがない、現実と地続きの米澤穂信の筆致。
そして伏線の張り方と不可解な状況の解きほぐし方は、まさにミステリのそれ。再読して唸る。

読者自身をも東尋坊に投げ出すかのようなラストには驚いた。
しかしラストを「絶望的」に解釈するブクログユーザーさんが多いのにはもっと驚いた。
僕自身は「決別」と「最初の一歩を踏み出す勇気と希望」の物語だと読んだからだ。

浦沢直樹の『MONSTER』や東野圭吾の『白夜行』のように、ラストの解釈によって余韻や物語の意味合いまで変わってくる。
あのシーンは、嵯峨野リョウにとっての「分岐点」であり、読者にとっての試金石だと思う。
当然そういうことも織り込み済みであり、僕らはまんまと作者米澤穂信の術中に嵌まっているのだろう。

レビュー投稿日
2013年2月5日
読了日
2013年2月4日
本棚登録日
2013年2月4日
19
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『ボトルネック (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『ボトルネック (新潮文庫)』のレビューへのコメント

アセロラさん (2013年2月5日)

こんにちは。そのウッチャンのコント、凄いですね。優れたお笑いはただ笑わせるだけでは無く、考えさせられたり、怖かったり、何らかの余韻を残してくれますよね。

ボトルネック、気になります。絶望or希望。自分はどう読み取るのか…。

kwosaさん (2013年2月5日)

アセロラさん

コメントありがとうございます。

そう、そのウッチャンのコントは当時の自分には衝撃的で、ずいぶん昔のことなのにいまだに覚えていますもんね。

『ボトルネック』
僕は面白く読んだのですが、もしこの本が「ファースト米澤」なのであれば、ちょっとビターな味わいに次を控えてしまうかもしれませんね。
是非、他作品もいろいろ手に取ってみてください。

九月猫さん (2013年3月31日)

kwosaさん、こんばんは。

コメントでは、はじめまして。九月猫と申します。
フォローしていただき、ありがとうございます。
また『ライフ・イズ・ビューティフル 』にうれしいコメントまでいただき、ありがとうございます!
(そちらにもお返事書かせていただいています♪)

米澤穂信さんの作品、小市民シリーズと古典部シリーズが大好きなのですが、
この『ボトルネック』は出だしで「あれ、テイストが違う?」となり、
さらに他の本に気をとられ、数ページ読んだまま放置中です(^-^;)

でもkwosaさんのレビューを読んで、こんなに面白そうなお話なんだ!と
読みたい気持ちがぐぐぐーんと!!
積読山に戻さずに、すぐ読む予定山にあるので(どちらにしても山なのですが;)、
近いうちにちゃんと読んでみようと思います。
ラストの解釈、どちらに受け取るのか・・・楽しみです。

素敵なレビューがたくさんのkwosaさんの本棚、こちらからもフォローさせていただきました。
これからどうぞよろしくお願いいたします(*_ _)ペコリ

kwosaさん (2013年4月1日)

九月猫さん

花丸とコメント、そしてリフォロー! ありがとうございます。

米澤穂信さんは僕も大好きな作家で、小市民シリーズはすべて、古典部シリーズは『クドリャフカの順番』まで読みました。
これら二つのシリーズは、青春のほろ苦さをカラフルな糖衣でくるんで上質なミステリに仕立て上げた感じですよね。
でも米澤さんって、結構カカオ純度高めのかなりビターな物も書きますので、ひとくち味わって食べ残してしまう気持ちもわかります。
全部の作品を読んだわけではないのですが、それでも総じてクオリティは高いので、他も手に取ってみてはいかがでしょうか。

それにしても、積読山と予定山。いいですね。
僕も予定山をつくっているのですが、いつの間にか積読の雪崩に浸食されていたり、掃除の時に妻にかってに並べ替えられていたりでなかなか......
水木しげるとゲゲゲの女房みたいになっています。

こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
楽しい本の話がたくさんできると嬉しいです。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『ボトルネック (新潮文庫)』にkwosaさんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする