読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100 (日経文芸文庫)

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本棚登録 : 211
レビュー : 21
著者 :
kwosaさん ブックガイド   読み終わった 

最近、この本はいつでも手が届くところに置かれている。

居間の自分が座る定位置の右。
そして寝る時には枕元のライトのすぐ側。
文字通り、座右の書、枕頭の書である。

杉江松恋さんは現在僕が最も信頼している書評家だ。
僕はいい本面白い本(映画、音楽etc.)を選ぶ基準として、何人が絶賛しているかよりも、誰がお薦めしているかが重要だと思っているので、自分と波長があう書評家の方に出会えたのは本当にありがたい(そういう意味ではブクログのお仲間のみなさんにはいつも感謝しています)。

この本にはその杉江松恋さんがお薦めする、いま読むべき海外ミステリが網羅されている。
アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』から、デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』まで、ここ百年間に書かれたミステリが年代を追って百冊。
しかも「現在、書店で新刊として入手できるもの」という縛りで選書されているのが嬉しい(とはいえ2013年10月23日初版発行の本書に紹介されている、ジョン・スラデック『見えないグリーン』が、すでに品切れ入手困難となっているのが出版業界の恐ろしいところ)。

読者や著名人多数の投票による「ランキング本」は数あれど、個人が選ぶミステリガイドというものは近年では少なくなっていたのではないだろうか。
個人的にこの本は、内藤陳さんの『読まずに死ねるか!』や瀬戸川猛資さんの『夜明けの睡魔』に並ぶ名著だと思っている。

まさに、スタンダップコメディアンのマシンガントークのように冒険小説を熱く語る陳さん。
そして、人気の大学教授の講義を聴いているかのような語り口の瀬戸川さん。
そのお二人に比べ、杉江松恋さんは抑えめの筆致でありながらも、ミステリ、いや小説に対する愛情と敬意が、行間からビシビシ伝わってくる。これは主役は作品であり、書評家はあくまでも裏方に徹しようとする松恋さんの美学であるような気がする。

杉江松恋さんのビジュアルは「マッコイ」という男っぽい語感が示す通り、建設現場の親方かボクシングジムの会長を思わせるなかなかの強面。
しかしひとたび文章を読めば、その細やかで丁寧な書評に魅了される。

『マストリード100』のなかでは各本ごとに項目が分かれていて、「あらすじ」はさらっと簡潔に。「鑑賞術」では濃く短く読みどころを味わい深く(当然ネタバレなし)。
そして「さらに興味を持った読者へ」では、関連した他作品を何冊か紹介。この項では毎回趣向を変えたテーマで他の作家の本も紹介してあるので楽しい。

巻末には「第二部 さらに楽しい読書のすすめ」と称して、「新刊で購入できる」という縛りから泣く泣く選外へと漏れてしまった過去の名作たちを紹介。
実はこっちの方が本編ではないかと思うほどの読みごたえ。
絶版だとわかるとますます読みたくなるのが人間の性で、気になった何冊かはAmazonで購入してしまった。
(1円で買ったものが最近1500円くらいになっていて驚いた。在庫数も減っていたので、みんなあわてて買ったのだろうか。)

本の目利きによる、ミステリ、エンタテインメント、小説への愛(恋?)と、読者への優しさが詰まった最高のブックガイド。
痒いところに手が届く『海外ミステリー マストリード100』
この本こそマストリード。
ぼろぼろになるまで読みたい。

(2014年3月6日には、千街晶之さんによる「国内編」も出るらしいので、そちらもすごく楽しみにしている。)

レビュー投稿日
2014年3月2日
読了日
2014年2月13日
本棚登録日
2014年2月13日
17
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