影裏

  • 文藝春秋 (2017年7月28日発売)
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感想 : 187
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雑誌(『文學界』2017年5月号)で読んだ。
久しぶりに難解な作品が来たか、という印象を受けたが、それはある種の文体から受けた印象で、作品の内容自体は実際読み終えてみると(これは文學界新人賞選考委員の松浦理英子氏も言っていたが)例えば何か謎が残るとか、わざと矛盾点があるとかそういったことはない非常なシンプルな構成になっている。ただやはり、筆力のある文体と言って良いのだろうが、ある種「凝りすぎている」印象が強かった。最近の若手で同様に筆力のある作家の高橋弘希氏などと比べると、力が入りすぎている感じがした。他の人はどうなのかわからないし、最近小説自体読むのが苦痛な状態にある自分の問題でもあるのだろうが、文芸誌で30p、単行本で100p弱の作品だが、読むのに非常に疲れた。
ラストに関しては、うまいところに収めたと思う。
また、震災が絡む、セクシャルマイノリティが絡む、という作品ということだけ聞いていたので、どんなどぎついのが来るのかと思っていたが、そこを収めた筆致はやはり評価されれるべきだろう。
ただ、津波のシーンや震災直後のシーンの描写などは読むのが結構辛かった。
しかし、芥川賞か…。いや、不満はさほどないんだけど、だったら高橋弘希にもやってくれよ、と思ってしまうのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芥川賞(候補含)
感想投稿日 : 2017年7月25日
読了日 : 2017年7月25日
本棚登録日 : 2017年7月25日

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