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オルガスマシン (竹書房文庫)
- イアン・ワトスン
- 竹書房 / 2020年11月13日発売
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男の果てしない欲望をガソリンに、ウーマン・リブへとドライブする絶望的傑作SF。
序盤の展開は(小説として)やや退屈な感があるが、話が明確な方向性を打ち出してからは非常に面白い。
最初の一文でも書いたけれど、男性性、男性的欲望をこれでもかと丸出しにしながら、目指すところが女性の解放である、というこの小説は矛盾に満ち満ちていて、書き上げてかなりの期間発表の機会が無かったのにも頷ける。
日本趣味?みたいなものもかなり入っていて興味深く読めた。
2020年12月8日
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密やかな結晶 (講談社文庫)
- 小川洋子
- 講談社 / 1999年8月10日発売
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つまらない本、悪い本だとは思わないし、読んでて退屈したわけでもないのだけれど、個人的に受け付けない本だった。
要するに、この小説のキモであるところの『消滅』という要素が、どうにも自分の中で腑に落ちず(実際、作中で『消滅』がどういうものなのかはかなりふわふわしている)、そこを了承させてもらえなかったのが大きいと思う。
もうそうするとこの小説の世界の住人になれないので、いろいろと小説のあらというか、不徹底なところが目についてしまう。ふわふわした幻想的な作品なのかと思いきや、ずいぶん読者をハラハラさせるエンタメに近い展開を持ってきたり、あからさまにナチスとユダヤ人の関係を示唆したり、この小説の目指しているところが僕には最後まで掴めなかった。残念。
2020年11月15日
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うわさの壁 (CUON韓国文学の名作 3)
- 李清俊
- CUON / 2020年10月10日発売
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クオンの『新しい韓国の文学』シリーズに比べてこの『韓国文学の名作』シリーズはあまりいいなと思えるものが正直なかったのだが、今回の作品はとても良かった。
無国籍的な『新しい〜』に比べて土着的な印象の『名作』シリーズだが、今回も韓国での事件に密接に結びついている。
作中、光にまつわる鮮烈なイメージが、小説を書くこと=陳述することと密接に結び合い強固な世界観を作り出している。
2020年11月5日
この人は前作から注目していて、なんとなくタダモノではない空気を感じ、いつか世間的に大きな賞でもとるのかなと思っていたらもう二作目で芥川賞を獲ってしまった。
ただ、個人的には前作『改良』の方が長さに見合ったテーマ性みたいなものがはっきり感じられて好みかな。
今後にも期待です。
2020年9月5日
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東京奇譚集 (新潮文庫)
- 村上春樹
- 新潮社 / 2007年11月28日発売
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すがすがしいほど本当はゲイのことなんて微塵も思いやってないのがあからさま。
ま、春樹だしね……。
2020年9月3日
村田沙耶香は短編の人という印象が強く、この作品集は期待していたのだけれども、ちょっとう〜ん、という感想になってしまうかもしれない。
一編あたりが短すぎるのが原因なのか、全体的に踏み込みが足りないと感じる作品が多く、筆者特有の『クレイジー』な世界観もやや消化不良というか、迫りくるものが足りない感じ。
面白くなかったわけではないので(「生命式」「孵化」とかは面白かった)、今後もこの作家の作品は読んでいきたい。
2020年6月15日
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なめらかな世界と、その敵
- 伴名練
- 早川書房 / 2019年8月20日発売
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短編集。長めの作品では、それぞれ大胆な世界への仮定をうまく物語に織り込んでいる。これぞSF!という感じのする作品集。個人的なお気に入りは「ひかりより速く、ゆるやかに」かな。設定と物語が一番両輪駆動していた感じがした。
2020年5月24日
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われら (光文社古典新訳文庫)
- ザミャーチン
- 光文社 / 2019年9月20日発売
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『ディストピアもの』の先駆的作品。
う〜む。
なんというか表現が独特(訳者あとがきを読むに、訳によるものというよりは原文の時点でかなり癖がある文体のようです)。素直な読書がなかなかできなかった。
内容も昨今のSFと比べるともっさりしているというか、なんというか不徹底な部分も目立つ気がする。
個人的には『素晴らしい新世界』に軍配を上げたい(『一九八四年』は未読)。
ただ、当時のソ連の状況を踏まえて考えると、また違った魅力を感じられる。この作品を書いた後作者が亡命しているというところがね……。
2020年5月18日
読んでいてなにかが足りないな〜という気がする。文章力もそうだし、構成力もそう。乃木坂のメンバーが書いたのでなければ、何十万部売れることはないどころか、デビューも危ういレベルなのではないか。
ただ、現役アイドルなのに大丈夫なのかと思うくらい性格の悪い表現が頻発し、面白い。羽田圭介もそこが魅力だと言っていたけれども、その底意地の悪さがセンテンス止まりで終わってしまっており、展開にも発揮されるようになったらもっとこの人は化けるかもしれないなとは思った。
アイドルテーマではない小説も読んでみたい。
2020年5月14日
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翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK
- 金原瑞人
- CCCメディアハウス / 2019年9月28日発売
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書店にて配布しているフリーペーパーをまとめたもの(何度ももらおうとチャレンジしているのだけど、いつも既に配布を終了してしまっている……)。
毎回テーマごとに巻頭エッセイ+16冊の紹介がされている。
海外文学、やはりまだまだ奥が深い。もっといろいろ読めたら良いなあ。
どの翻訳家も自分の訳書に並々ならぬ愛情を注いでいるのだな、というのが改めて感じられた。
2020年5月8日
久しぶりに質・量ともに重たいものを読んだ。
あとがきで自省しているとおり、あまり(特に技巧的に)うまくない小説という気もする。しかし、小説の持つ熱量みたいなものが、とても熱くてたまらなく良いなと思わせてくれる。
思想×オタク×青春×革命、みたいな話で、水と油にも思えるものをガッツリ混ぜ合わせていて化学反応も面白い。
ただ、もうちょっとペース配分がどうにかならなかったのか、という気がする。後半のパートが駆け足すぎてまるごと夢のようなできごとに思えてしまう。ああいうことこそしっかり腰を据えて書いていただきたい。もともと1000枚書き上げたものを450枚まで縮め雑誌掲載、その後さらに加筆修正とのことだったので、元々の1000枚版ではどうなっていたのだろうと思いを馳せる。雑誌掲載版も読めれば読みたいなあ……。
2020年5月3日
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私の生のアリバイ (韓国文学ショートショート―きむふなセレクション)
- コンソノク
- クオン / 2020年4月10日発売
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中盤、物語が本格的に始まって以降は、まさに解説にあるように「愛」についての諸々がぎゅっと詰まっているようで、良い。
人々が落ち込むどうしようもない隘路と、そこから抜け出そうともがく人々の姿がよく描かれている。
2020年4月20日
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芽むしり仔撃ち (1965年) (新潮文庫)
- 大江健三郎
- 新潮社 / -
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2005/09/24:初読
2020/04/11:再読(新潮文庫新版)
久しぶりに再読したけれど、やはり大江健三郎は圧倒的だな……!!!
独特の文体がまず素晴らしい。久しぶりだったので最初はややつっかかったんだけど後半慣れてくると(内容も相まって)ドライブがかかってくる。
内容も非常に示唆的というか、今の時勢(コロナ蔓延)とちょっとだけかぶるような部分もあり興味深く読んだ。
2020年4月11日
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呉圭原詩選集 私の頭の中まで入ってきた泥棒 (CUON韓国文学の名作)
- 呉圭原
- クオン / 2020年3月25日発売
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このシリーズは全部読もうと思っているので読みましたが、やはり詩は難しいな……。
「リカちゃん人形」みたいなドールをテーマにした詩が一番印象的だったかな。その詩に込められた意味の解説も面白かった。
2020年3月31日
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美しい距離 (文春文庫)
- 山崎ナオコーラ
- 文藝春秋 / 2020年1月4日発売
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2016/11/15:ハードカバー
2020/03/28:文春文庫
初読の際いたく感動して人に勧めまくった本作だけれども、改めて読み返すと結構気になる部分が多かった。
特に主人公のものの考え方というか捉え方みたいな部分にちょっと引っかかりができてしまい、その小骨がいつまでも刺さっている感じだった。
だけれども、全体として好きな小説であることに変わりはないし、良い小説だとは思う。
2020年3月28日
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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
- ブレイディみかこ
- 新潮社 / 2019年6月21日発売
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子どもはタフだ。と同時に、子どもは脆い。教育なんてなくてもこどもたちは育っていく、とも思ったし、同時に、教育なしに子どもたちは育たないのだな、とも思った。甥っ子がいるので彼が今後どう成長していくのかなんて考えてしまったなあ。
やっぱり子どもは大人が思っている以上にものが見えているものだよな、とも。
2020年1月25日
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おちくぼ姫 (角川文庫)
- 田辺聖子
- 角川書店 / 1990年5月25日発売
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完全に勝手なイメージなんだけど、田辺聖子ってもっと硬派な作品を書いているんだと思っていたから、書き方が全然ライトでびっくりした。
ストーリー自体はさすがに昔の作品なだけあって割と一本調子というか、現代の作品に慣れていると単純に感じるんだけれども、それでもなかなか楽しく感じることができた(元々が良かったのか田辺さんの編集の腕が良かったのかは分からない)。各キャラクターが立ってるといえば良いのか……。昔の小説でも現代の小説に通じる部分がいっぱいあってそのあたりを面白く感じた。
2020年1月11日
著者の本を読むのは初めて。初小説らしい。
野間文芸新人賞受賞作らしいけど、正直あんまりうまくないなあと感じた。
なんというか、交通整理ができてない感じ(もちろん小説の場合、いたずらに交通整理をすればよいというものでもないのだけれど)。
うーむ。
2019年12月13日
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透明な迷宮 (新潮文庫)
- 平野啓一郎
- 新潮社 / 2016年12月23日発売
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純文学の短編集にしては、毛色がちょっと変わっていて、SF(少し・不思議)短編集……といった趣。平野啓一郎の短編集は前のやつは形式的な実験の色が強めだったけれど、これは内容での実験といった感じなのだろうか。この人の言う「分人主義」がなんなのか良く分かってないんだけど。
個人的に面白かったのは「消えた蜜蜂」「火色の琥珀」かな。短いながら良くまとまってて面白い。
2019年12月2日
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広場 (CUON韓国文学の名作)
- 崔仁勲
- クオン / 2019年9月30日発売
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CUONの本は『新しい韓国の文学』シリーズをこれまでいくつか読んできていて、すごく良かったので信頼して、今回この『韓国文学の名作』シリーズが刊行されてどういうのなのかなと楽しみに読んだ。のだけれども、うーむ、正直少々難解だったかな……。場面や時間が割合慌ただしくころころ変わるのが辛かった。
〈韓国最高の小説〉にも選ばれているらしいんだけど、これはやっぱもっと土着的な空気みたいなものを肌で理解していないと入り込めない部分もあるように感じた。
ただ、終盤の迫り来る文体はお見事。素晴らしい。
とりあえずこのシリーズはもう少し読んでみよう。
2019年11月30日
淡々とした筆致はまさにこの淡白なタイトルに相応しい。
終盤いきなり物語が猛スピードに加速しだして、一気に駆け抜けるんだけど、あそこは意見がわかれるところかなという気がした。通俗的なオチにいっちゃったな、と感じる人もいると思う。自分は振り返るとそれなりにしっかり物語のテーマの「美」とも絡んでいたのかなという気がしたのでアリなのかな、と思った。
独自の感性を持っている人だと思うのでこのまま突っ走って欲しい。
2019年11月23日
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消滅世界 (河出文庫)
- 村田沙耶香
- 河出書房新社 / 2018年7月5日発売
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『フェミニズムSF小説』、ということになるらしい。
なかなか面白かったが、若干の詰めの甘さというか、居心地の悪さみたいなのを感じてしまうのは何が原因なんだろう。
『家族』概念の残り方に(世界観的に)違和感を覚えてしまってそこがずっと引っかかってしまった。
むしろ3章に入ってあたりからは逆に現実味が増して感じられて面白かった。こんな未来ありえるんじゃないかと。
2019年11月20日
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82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)
- チョ・ナムジュ
- 筑摩書房 / 2018年12月7日発売
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今まで読んできた韓国文学はどれも『無国籍』的というか、国のにおいをあまり感じさせないものが多かったのに対し、これは思い切り土着的…というとちょっと違うけれど、国に根付いた問題を取り扱ったものだったので、今まで『韓国文学』に抱いていたイメージから随分隔たった作品だった。当たり前だけど、その国にはいろいろな作品があるのだな、と痛感。
30代男性としてこの作品を読んで、色々と考えさせられてしまった。
2019年11月17日
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リカ (幻冬舎文庫)
- 五十嵐貴久
- 幻冬舎 / 2003年10月10日発売
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普段読まないジャンルの本。
途中までは読んでてげんなりする感じのリアルさがあるというか、嫌だな〜嫌だな〜と思っていたんだけど、途中からどんどん現実にありえない方向に話が進んでいってしまってなんだか感情移入できなくなってしまった。いや全く面白くなかったわけでもないんだけど……。
しかしやはり自分が好んで読むタイプの本ではないなと。う〜む。
2019年11月9日