それをお金で買いますか――市場主義の限界

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本棚登録 : 1876
レビュー : 232
制作 : 鬼澤 忍 
Kensukeさん 哲学   読み終わった 

お金で何でも買えてしまうのだろうか?

先日読書会に参加してきました。サンデル教授の本は「Justice」も読んで
非常に勉強になっていましたが、今回も実に考えさせられる本でした。

お金で買えないものは当然あるんですけど、その領域がどんどん狭まっていると感じる。
例えば、愛や信頼というものは絶対に買うことができないけれども、
臓器しかり、狩猟禁止領域の動物のハンティング権しかり、
何でもお金さえ払えば入手できる世の中になりつつある。

経済学的に双方が望んでいるのであれば、良い取引になるんだけれども、
例えば臓器を売るという事が倫理上許されることなのか?
そんな経済学の分野に政治哲学を持ち込もうとしたサンデル教授は本当にすばらしい。

市場原理があらゆる取引に介入すると、2つの問題が起こるとサンデル教授は言っている。
一つは公平性の問題、もう一つは腐敗が起きることだ。
後者の例はイスラエルの幼稚園で起きた罰金 vs 延滞料金のだろう
(ここではこの話を省略します。本に書かれていることなので)。
いったんお金で解決しようとするとその人の行動の価値観を変えてしまい
二度と戻ることがないのだ。

この本を読んで恐ろしいと感じたのは「生と死を扱う市場」という第4章だ。
アメリカではバイアティカルというものがあり、これは余命いくばくかという
人の生命保険を投資家が購入して、保険料を支払いそしてその人が
仮に死んだ場合は死亡保険を受け取るというのだ。
考えてみてください、このシステムがうまく機能するのは余命1年と宣言された人が、
予測通りなくなることが条件なのだ。
人の死を願ってしまうインセンティブが働くことになる。
信じられますか?このようなシステムがアメリカではすでに事実としてあるということを。

ではどうすれば、この市場主義を止めることができるのか?
それは我々が対話を通して市場の役割は何かという事を考え、
市場が侵入してきてはいけない領域というものを作ることだ。
ひいてはサンデル教授のいう共通善とは何かという事につながるのではないか。

こういう機会を作ってくれた友人のYさんに感謝です。

レビュー投稿日
2013年5月30日
読了日
2013年5月26日
本棚登録日
2013年5月30日
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