著者である、野呂エイシロウ氏のことを僕は、この本を手に取るまで知らなかった。氏は放送作家として「元気が出るテレビ」や「ズームインSuper」「アンビリバボー」など、40を超える番組に携わる他、映画やCMを手がけ、さらには企業コンサルタントとして電通やグルーポンジャパン、味の素などをクライアントに持つ。
なぜ著者はここまで幅広い活躍ができるまでになったのか。その秘密を氏は「自分を相手にどう見せ、自分を売り出すか」を明確にすることだと明かす。
著者のプロフィールや「稼ぎが10倍になる」というタイトルからは、ややもすると「大量の仕事をいかに捌くか」という内容を想像してしまうが、この本の主題は「自分を上手に見せる」ことでいかに相手に信頼してもらい、仕事の幅を広げるかというもの。いわゆる「自己ブランディング」の中でも、アウトプットに特化した内容と言える。
FaceBookで記事を書いていても、例えば自分の仕事のことをネタにするのはなかなか難しい。だから、食べたモノの話とか、飲み過ぎて酔っぱらった醜態を晒すとか(涙)、「◯◯に遊びにいきました」というような写真を並べてしまう。しかし、著者はそうした意味の無い自己開示を一刀両断し、自分をうまく見せるためには何を書き、どうすべきか言及する。
実は氏は駆け出しの頃、同じような恵まれない環境に居る若手の放送作家たちから一歩抜きん出るために、借金をして10年落ちのベンツを買い、テレビ局の目立つ場所にいつも止めていたという。本来なら自分がやりたいと思うことを「実際に実現してしまっていたとしたら」どういう行動を取るか、ということを明確にし、それを先に人に見せてしまう、というのが、この本の根幹にある考え方だ。
そこまで極端な例でなくても、「お役立ち」ネタでブログを書く、仕事に絡むプロフィール写真を使うというようなSNSの上手な活用による「見せ方のコツ」の他、お礼メールは全員をCCに入れて誰よりも早く出すといった、実ビジネスにおいて「頭一つ出るための」アドバイスも豊富。
一部、自分の活動や成果をより良く見せるために「盛って」書く演出テクニックも紹介されており賛否両論あるだろうが、プロフィールを上手に構築するヒントが盛りだくさんな本書は、SNSの活用法としてだけではなく、自己の持てる価値を再検討する上でも大変参考になるだろう。
- 感想投稿日 : 2013年8月10日
- 読了日 : 2013年8月10日
- 本棚登録日 : 2013年8月10日
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