丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

4.05
  • (696)
  • (789)
  • (451)
  • (57)
  • (8)
本棚登録 : 5833
レビュー : 731
著者 :
制作 : 山田 章博 
京都光華女子大学図書館さん  未設定  未設定

 この本は十二国記シリーズの中でも、異色な短編集だと思います。私は、シリーズの「魔性の子」以外は全て読みましたが、どれも国造りに直接関わる人々の話で、雲の下の人々の話は初めてでした。それまでの国造りにおける”なぜ上手くいかない”という苦悩と、国の浮き沈みに翻弄される国民や小官吏の苦悩を比べると、全く内容が違いました。
 十二国の世界では、王が斃れれば国が沈みます。それは世界の摂理であり、逆に王が玉座を守れば国は豊かになります。ただ、国民や官吏でも王に近づけすらしない者たちにとって、国運は本当に雲の上の話で、彼らの言葉はどんなに切迫した状況でも王には届きえないのです。民主主義の日本に生まれた私ですら、国民一人一人の声の小ささというのは実感しているので、彼らの歯がゆい思いは肉薄して感じられました。全体的にその苦悩は遣り切れない印象で、救われない思いが切々と綴られ、聞きなれない名称や昔の中国風の住環境が描かれている事も相まって、小説を読んでいるというより歴史書を読んでいるようでした。ただ、4編の内3編には小さな救いがあり、場面場面では思わず感涙してしまい、こんな短編集もありだと思いました。
 十二国記シリーズを読んで、小野さんの世界観の見せ方や、その壮大な構想に感銘を受けました。中国の史実を基にした十二国記の世界は、小野さんにとってリアルな世界なんでしょうか?そう思ってしまうくらい、実際に見てきたような現実感と、完璧な整合性で、小野さんの力量の程を思わずにはいられません。まだスポットの当たっていない国や、人々の話もぜひ読みたいです。 [ペンネーム・ringo]

レビュー投稿日
2013年11月25日
本棚登録日
2013年11月25日
2
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 ...』のレビューをもっとみる

『丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする