新樹の言葉 (新潮文庫)

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本棚登録 : 629
レビュー : 58
著者 :
kyuyaさん  未設定  読み終わった 

 全部は読んでいない。未完の作品である『火の鳥』と『春の盗賊』以降以外は全て読んだ。以前は太宰治の作品にハマっていたが、現在の自分の心情と、太宰治の作品の中でもそれほど完成度の高いものではない作品が多かったことから、良いと思ったところはあまりなかった。

 太宰治の作品を読んでいたのは主に中学から高校にかけてであるから、読んだ時の感想がこのように文章として残っていない。しかし、これに収録されている作品は『走れメロス』に収録されている作品と似ていると思った。割と明るい作品が多く、表題作である『新樹の言葉』は『黄金風景』と似て、以前は豪農の坊っちゃんで現在は落ちぶれている自分と、以前は自分の家の女中をしていて現在は幸せを掴めている、または掴もうとしている女性との対極が描かれている。そして富士の見える甲府盆地での体験が描かれた作品も多い。

 これを読んでいて思ったことだが、太宰の中期の作品は人間賛歌のものが多い。現在は落ちぶれている自分を描きながらも、以前は女中のようなことをしていた人物でも現在は気高く気丈に生きている他者が登場し、その人物に自分の希望を託している。太宰は『人間失格』などで知られ、人間を否定的にみていると思われがちだけれども、そのことは逆に人間を信じたいと思い、人間の善の部分を希求していたことの裏返しなのではないかと思う。

レビュー投稿日
2010年9月19日
読了日
2010年8月7日
本棚登録日
2010年9月19日
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