一ページ進むごとに、色あせた古いスウィンギング・ロンドンの写真に色彩が蘇り、動き出してくるような回想録。
<黄金の耳>を持つといわれたサウンド・エンジニアの視点から見たビートルズのデビュー、成長、爆発、自爆を時系列に記した本書はまるで定点観測による記録のような趣があるが、それだけに喜び、怒り、笑い、哀しみがリアルに伝わってくる。2トラックや4トラックという今日ではもはや伝説的な世界でしかない録音の現場が生々しく描かれているところは貴重な記録と言えるだろう。
これがわずか50年程まえのことなのかと思うか、あるいはもう50年も過ぎてしまったのかと思うか、さらには大昔の話と思うかは読者の年代によって異なるかもしれないが、形にならないエネルギーの塊がさまざまにうごめいていた1960年代という狂ったような時代を生きてきた者は、おかしさ、懐かしさと同時に哀しみも覚えるのではなかろうか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
音楽
- 感想投稿日 : 2016年5月4日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年4月29日
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